
あたしはいっちょん。
ファイナルファンタジー14の「14」から名前を取った。
いちよんだからいっちょん。

一人で旅を始めて、仲間ができたあのミコッテさんのように、あたしにも、このエオルゼアで友達ができた。
これから、どんな冒険が待っているんだろう。

フォティンちゃん。
あたしと同じ、ファイナルファンタジー14の「14」から名前を取ったんだって!
なんだか、あたしはその事が嬉しくて嬉しくて、いっぱい聞きたい事があったんだよ。
「立ち話もなんだし!キャンプに戻ろうかっ!」
フォティンちゃんの言うままに、キャンプに戻ることにした。
ふふ。リアルだと立ち話は疲れるけど、ゲームだからずっと立ってても疲れないのになw
フォティンちゃん、変なのw
あたしたちは、テコテコ走ってキャンプまで戻った。

キャンプに着いたら、あたしは焚き火の前に座ってみた。
別に座らなくてもチャットはできるけど、もし自分が本当にそこにいたら、そうするだろうと思って座ってみた。
フォティンちゃんも横にちょこんと座ってくれた。
「いっちょんはFF始めてどれくらいなのかな?」
「ん~。まだ始めて3週間くらいかなあ」
なんだろう・・・この胸が高鳴るというか・・あせるというか・・・この感じ・・・
新しく進学して・・・クラスに誰も知り合いがいなくって・・隣に座った子と初めてお話する感じ?
どこの人?いくつなの?なんでFFしようと思ったの?なんでブリオー着てるの?どうして声をかけてくれたの?
あ、前はお辞儀してくれてるのにデジョンしてごめんね!
聞きたい事がいっぱいありすぎて・・・ 逆に何から聞けばいいかわかんなくなって、ちょっと嫌な沈黙が・・・
そうすると、フォティンちゃんは、立ち上がり、裁縫を始めた。

あー・・・ 退屈させてしまったかなっ><
でも・・・頭の中で聞きたい事がぐるぐる廻って・・文字を打っては消し打っては消し・・・
どうしようっ>< 沈黙がつらいっ!!
何か聞こう!何か・・!! そして必死で考えた末に決まった質問は・・・
「裁縫やってるんだねっ」
あー!あー!そんなの見たら解るのにっ!なんでそんな事聞いたかなっ! あたしわっ!!
でも、フォティンちゃんは答えてくれた。
「うん~♪たのしいよねーw まだ始めたばっかりだけどねー」
「あたしもね、裁縫やってるんだよ。まだ草糸もたまに失敗するけどね」
「そうなんだーwサイトでレシピとか見てるだけで楽しいよねw」
「うんうん!いっぱい服の名前覚えたよ!作れないけどぉ」
「あははwわかるーw」
一度、会話が滑り出すと、あとは普通に友達と話しているような気持ちになれた。
とても たわいも無い会話。でも、とても楽しい会話!
裁縫をしながら、フォティンちゃんは器用にお話を続ける。

「いっちょんよっ!これは運命だと思うんだよっ!」
「ん?」
「同じ由来の名前を持つ二人は出会う運命だったんだよっ!」
「おー!」
「ですのでー!今フォティンちゃんは、メモリアルアイテムを作ってマース!」
なんか・・ちょっとキャラがよくわかんないよw フォティンちゃんw
でも、運命とか言われると・・・嬉しくなってくる自分がいる・・・
「何作ってるの?」
「名づけて、友情の14グローブです!出来たらあげるね^^」

なんだろうw 14グローブってw
でも、初めてのお友達フォティンちゃんが今、あたしの為に何かを作ってくれてるんだっ!
それだけで、すごく嬉しいよー!

「できたっ!友情の14グローブ完成でーっす!」
「うわー!感動だよ~!」
もうこの頃には、思っていることを入力して発言するようになっていた。
フォティンちゃんがすごく近くに感じたんだよ。
「・・・と言っても、コットンハーフグローブだけどねw」
初めてのトレードが来た。
あたしは、わからず、何度も決定ボタンを押した。
グローブを受け取り、早速装備して、お辞儀をして見せた!

「ありがとう^^すごく嬉しい、大事にするね。」
あたしも何か返したいけど、何も持ってない事をフォティンちゃんに言うと、フォティンちゃんは、また今度何か作ってーと言ってくれた。
うん!あたし頑張るよっ!!
その後、フォティンちゃんのお気に入りの場所へ移動し、遅い時間まで色々とお話をした。

どうやら、明日は「1.20」という大型アップデートというのがあって、色々この世界が変わるらしい。
「あとね!ウルダハに雪が降るらしいよっ!」
「え?砂漠なのに??」
「うんw でもそれがすっごい綺麗らしくて、すごく楽しみにしてるんだー!」
それはすごいっ!見たいっ!! ただでさえ綺麗なエオルゼアに雪が降るなんてっ!!
しかもクリスマスツリーまで立つらしいっ!!うっわー!
すごく楽しみだよっ!!

「あー!っていうかもう3時だよー!寝ないとー!」
え?もうそんな時間?? すごくあっと言う間に時が過ぎたよー!
フォティンちゃんとは、今日会った気がまるでしない。ずっと友達だったような錯覚さえ覚えた。
あたしの、はじめてのお友達・・・フォティンちゃん。
寝るのがもったいないけど・・・寝ないとね><
その前に・・・
あたし、本当は自分から声をかけなくちゃいけなかったけど・・・
でも、あたふたしててフォティンちゃんに声をかけてもらったんだった・・・
このままじゃ駄目だ・・・
ここで・・・あたしは変わるんだ!
断られるかもしれないけど・・・
あつかましいと思われるかもしれないけど・・・
勇気を出して、あたしの物語をはじめるんだ!
そのために、エオルゼアに来たんだからっ!
あたしは、あたしの中にある勇気を振り絞って・・・顔を真っ赤にして、キーを叩いた。
がんばれっ! あたしっ><

「明日、フォティンちゃんと一緒にウルダハの雪を見たい!」
「だから、明日も一緒に遊ぼう?」
言えた。言えたよ。あたしの気持ち。
すぐに返事は返ってきた。
「うん^^」

「14グローブありがとうね!大事にするっ^^」
「いえいえっ じゃあ明日22時にウルダハに立つツリーの前で待ってるね^^」
「22時にツリーの前ねっ!わかったー!」
「おやすみー^^ノシ」
「おやすみ^^」
これから、はじまるあたしの物語。
二人で狩りをしたり、二人でおしゃべりしたり。
ほんの少しの勇気で良かったんだ。
少しだけ、あたしは成長したのかな。
次の日、あたしは仕事を終わらせ、先輩に夕食に誘われたけど、断った。
男ができたか?とか言われたけど、違う違う。
もっと素敵な人ができたのですよw
家に帰ってさっそくPCの電源を入れる。
まだ、約束の22時には40分ほど余裕があるけど、支度を済ませてログイン!
バージョンアップが終わり、あたしは、いっちょんとしてウルダハの地に降り立った。

おおー!雪だっ!雪だー!ツリーもあるー!!
これはテンションがあがるー! あれ?でもツリーって街中にいっぱいあるよ??
まだ時間もあったので、ウルダハを一周してみる。
とりあえず、一番大きいツリーの前で待ってよう^^

雪が降っても14グローブが温かいぞー!
っていうか!今日は何して遊ぼうかなっ!おしゃべりもいいしー!
ノートリアスモンスターに挑んでみるのもいいかなっ!!
レベルがまだ足りないだろうけど、ひょっとすると友情パワーで倒せちゃったりするかもっw
無理かww

でも、ちゃんとフォティンちゃんの意見も聞かないとねっ!
FFのサイト等を見ながら、何をどうやって裁縫のレベルを上げるか考えてみたりして時間をつぶす。
部屋の暖房が効いてきて、少し眠たくなってきた。
時計に目をやる。
22時17分。

リアルの世界なら、電話やメールをするのになあ。 エオルゼアにはそんなものはないっ!
何かあったのかな? 約束を忘れちゃった? そんな事はないだろうしなあw
他のツリーで待ってるのかなあ?ちょっと見に行こう。

てくてくと他のツリーを見に行っても、いない・・・。
そうか!この間させてもらった、フレンドリストを見れば、ログインしてるかどうかわかるじゃなーい!
でも・・・たったひとつのフレンドリストにログインランプは灯っていなかった。
もう時計の針が23時を指す。

だんだん不安になってきた。
フォティンちゃんに何かあったのかな?という不安が、心の中で嫌われてるのかな?という不安に変わってくる。
昨日は、意気投合したつもりでいたけど・・・合わせてくれてたのかな・・・
砂漠の街に降る雪は、あたしの気持ちをどんどんと冷やしていく。
時計は1時をまわっている。

そうだよね。こんなもんだろうね。
なんとなく・・・そんな気はしてたんだ。
14グローブで涙を拭う。
こんな事になるなら・・・いっちょんなんて名前にするんじゃ無かったよ。

フォティンちゃんのいない砂漠の街に、いつまでも雪が降り続けた。
綺麗でふわふわとした雪は、決して積る事は無く、あたしに触れるたびに消えてしまう。
昨日と同じ午前3時。
あたしはログアウトした。
この日、アップデートされたFF14は、一瞬でゲームが終了できるように変更されていた。
気が利くね。
この日、フォティンちゃんが来なかった理由を知ることになるのは、それから数日が過ぎてからだった。
つづく。
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