ナナモ様と女子会 特別編 『京橋秘話』

    京橋秘話

    ――夏の寸志をかけた、あの営業コンテストの決戦から、幾らかの時が経った。

    むせ返るような冷房の室外機の熱と、うるさいポン引きが闊歩する、JR京橋駅……その街をの裏路地に、めっちゃ細いビルがある。おもわず舌打ちをしたくなる狭いエレベーターで昇ると、めちゃ狭い入り口があり、席の埋まり具合も仕事帰りのおっさん約8割とそこそこ順調といったところ。

    かの名店「ワタミ」に知名度では及ばないものの、がちゃがちゃ言いながらアフター5の時間を過ごすには最適な場所だった。

    そんな店の片隅で、うら若きと言うほどでもない女子達の女子会が行われているなどと、誰が信じるだろうか……。

    メルウィブは手にした中ジョッキをテーブルに戻しながら、思わず小さな笑いを零した。目の前のテーブルには、店の名物だという6種のソースで楽しむメガポテトと、揚げ物の数々。そしてその向こうには、たこわさを咀嚼しながら「なんやさ?」と小首をかしげるカヌエがいた。

    元々この店を見つけたのは彼女で、今回のコンテストが落ち着いたらみんなでに行こうと約束していたらしい。

    では、そのときの約束の相手たちはというと……

    京橋秘話1

    ナナモ 「あんたらちょっと来んの早いで?」

    メルウィブ 「はぁ?あんたが遅いねん、
    頭沸いてんちゃうん?まあ先に飲んどったからええけどなw」


    足早に近づいてきたのは、平和堂で買ったスーツを纏ったナナモだった。
    定時の後も社に残り、たまりたまった交通費の清算に力を注いでいた彼女とは昼ぶりの再会になる。

    ナナモは嬉しさをにじませながら半笑いでテーブルにつき、やってきたバイトの子に追加の注文を告げた。
    そして、改めて昼ぶりの仲間たちの顔を見渡す。

    ナナモ 「・・・あれ?こんだけやったっけ?」

    京橋秘話2

    メルウィブ 「いや、クルやんにも言うてんで、でもクレームなんやて、ご飯タッパーに入れてきて言うとったわ。ほんでから うちらの営業さんは・・・」

    ともにこの居酒屋に来ると約束したはずの、件の営業マンの姿はない。
    カヌエが子持ちシシャモを飲み込んで、少々不服そうにメルウィブの言葉を継いだ。

    京橋秘話3

    カヌエ 「多分、またどっか駆けずり回ってんちゃう?場所と時間は言うてるし、大丈夫やと思うで……」

    ナナモは「はぁ?」と苦笑しながらもしゃーなしやなという様子だ。

    京橋秘話4

    ナナモ 「ほんま、よー働きよんなあ。」

    カヌエ「なんかな・・・。新人の子につきあってクレーマーのとこ営業行ったかと思えば、 その話を勉強会っていうて新人に聞かせたり、どこぞに依頼品を届けたり……。得意先の手伝いもしてるらしいし、 いつもの商会にも、また大量の商材を持ちこんで……めっちゃすごない?w」

    京橋秘話6

    メルウィブ 「えらい詳しいやん。狙ろてんの?」

    カヌエ 「はあ?ちゃうしww 私は普段どんな事して数字作ってるんかなって聞いただけやんww まあ私営業ちゃうし全然参考にならんかったけどなww」

    ナナモ 「・・・きっしょ。」

    カヌエ 「ちょ、ナナモちゃんもw ・・・っていうか、誰かに憧れてる言うんやったら、経理部長やわ。」

    カヌエは自分で取り分けたコーンバターを一定のペースで一粒一粒箸で啄ばみ、まわりをイラっとさせながら経理部での思い出を語り始めた。

    京橋秘話7

    彼女が同僚とともに、社長の海外出張からの帰還を待ちながら、経費清算をしていた頃。

    度々悩まされた用途不明の接待費の問題に対し、大原簿記法律専門学校で得た知恵を応用して解決策を提示したのは、ほかでもない経理部長だったらしい。用意周到な経理部長のこと、こうなるとわかっていて勉強をしていたのかと、カヌエは彼に問うた。

    カヌエ 「そしたらさー、なんて言うた思うーっ?ww」

    京橋秘話5

    ナナモ 「っていうか、その話おもろなる?」

    カヌエ 「え?」

    京橋秘話8

    メルウィブ 「おっさんの話に興味ないわ。」

    ナナモ 「チッチキチーな話題やで。」

    カヌエ 「ええええ・・・・ww」

    間もなく、バイトの子がナナモの頼んだ冷たい金黒バチ割りを運んできた。

    すだちやレモン、ライムをふんだんに使用し、大きなハチの中で水3:焼酎7の比率で割ったそれは、ゴロゴロとした氷と共に各々自分で酌み分けるキンキンに冷えた焼酎だ。

    一口飲んだナナモが、目を輝かせる。

    三人がかつて過ごした夏のビヤガーデンにも、あらゆる夏の風物詩と言える酒や料理が集められていたが、やはり夏にみんなで飲むバチ割は一味違う。ましてや、おっさん達の都としても知られる京橋の料理は、とりあえず安くて油っこいものばかり……
    大阪に来た当初は内心ずいぶん驚いたものだと、和歌山県有田市出身のメルウィブは懐かしく思った。

    京橋秘話9

    メルウィブ 「ていうか、あんたまだ忙しいんちゃうん?
    営業交通費の清算ちゃんと終わらせて来たんかいな?」


    メルウィブの問いに、ナナモは少し目を伏せ、バチ割のおかわりを酌んだ。

    京橋秘話10

    ナナモ 「せやな・・・まだまだ問題ばっかりやで・・・・・。交通費とかお金に関する事では、「あっしアホですねん」とか言うてられへんからな、一生懸命考えて実際に乗ってないバスのルートとか計算してるけど、あんじょーいくことなんかほんまに一握りやで。」

    カヌエ 「あかんやつやんww」

    京橋秘話11

    彼女の指が、冷えたグラスの表面に触れる。なんとはなしに表面の水滴をなぞりながら、ナナモは続けた。

    ナナモ 「途中でチャリパクッてそれで移動して、南船場から尼まで行った交通費清算したろかなーとか思ってまうこともあんねん。
    ほんで、なんで200円とか300円とかの為に犯罪者ならなあかんねんって、もっときつなる。
    ・・・でもしまいには、色々考えるのめんどくさくなってな、気がついたらグーグルマップでパリの街並み調べててん。」


    メルウィブ 「あんたアホやろ?」

    ――そう言い切った彼女の表情に、かつて高槻から京橋まで自転車通勤しつつ毎月定期代を請求してたのがバレて懲戒解雇になった子の面差しが重なって見えたと言ったら、果たして本人は信じるだろうか。

    カヌエが小さく息をつき、問答無用でナナモ用に≪タルタルかけ放題≫たっぷりタルタルのチキン南蛮を追加する。「えっ、そんなん白ご飯欲しなるやろ!」とうろたえるナナモを制するように、メルウィブが半笑いで言った。

    京橋秘話12

    メルウィブ 「いっぱい食べてがんばりーさ。あんたデブやからすぐお腹空いた言うし、すぐカバンからバナナ出して食べるし、とんかつ屋行ってもヘルシーとんかつ頼むくせに ご飯大盛にするし、ほんまデブ。」

    ナナモ 「デブちゃうわっ!」

    お腹のお肉をつまんでしょげはじめるナナモの皿に、メルウィブはとどめとばかりにとろっと半熟玉子のポテトサラダを置いた。

    メルウィブ 「サラダも一緒に食べとったら大丈夫やで。」

    ナナモは顔を上げ、仲間の顔を交互に見て……笑顔を咲かせて頷いた。




    京橋秘話13

    ナナモ 「あ、せや、最近うちに新人の子来てんかー。同い年くらいの高卒の中途やねんけど。なんかめっちゃ電車に詳しくて色々教えてくれんねん。今日もその子があとは調べときまっさー言うてくれたから来れてんで。」


    ぐだぐだにタルタルソースがかかったチキン南蛮を順調に減らしながら、ナナモは近況を語っていた。
    話の流れで出てきたその新人について、彼女は悩みがあるのだという。なんでも、よくふたりで話をするのに、不自然なくらい顔をそらされてしまうのだそうだ。

    ナナモ 「なんやあっし嫌われてるんかなー?せやったらごめんやでって思うし、ぶっちゃけて言うてみろやコラ、殺すぞって言うたらめっちゃ逃げていきよんねん。」

    カヌエ 「面と向かって『ブッサイクですねー』ってよー言わんのちゃう?私は言えるけどw」

    カヌエの身も蓋もない感想に、メルウィブはやれやれと首を振った。

    京橋秘話15

    メルウィブ 「あのね、あなたたち・・・それはどう考えてもあんたを狙てるんですよ。
    話を聞く限りではその新人君はデブ専のけがあるんですよ。」


    ナナモが、不意打ちに手元のおしぼりを丸くする。
    妙に長い一瞬の後に、丸めたおしぼりをメルウィブにぶつけて否定した。

    ナナモ 「デブちゃうわっ!わがままボディーや!」

    カヌエ 「出たww」

    メルウィブ 「はいはいw」

    それきり言葉は続かなかったが、メルウィブもカヌエも、あえて追求はしなかった。
    それほど太ってないのにこれ以上デブネタを引っ張るのも無理があるように思ったからだ。

    彼女は話題を打ち切るように、バチ割を煽ってから、メルウィブを精一杯睨んだ。

    京橋秘話17

    ナナモ 「そういうメルねーはどうなんやさ?よー西成でそこらのおっさんと飲んでるんやろ?」

    メルウィブ 「ごめん・・・あの人らについては考えたことも無かったわww 
    でも・・・・せやなあ・・・・・・・」


    メルウィブは、胸の内で西成でのある出来事を思い出す・・・・。

    京橋秘話18

    そう言えば、先週の休みの日に、西成をプラプラ歩いてたら、いつものように道端でゴザ敷いておっさんがバザーやってた・・・・。

    それ需要あんの?って聞きたくなるようなものを100円とかで売ってて、その中でひとつ気になる商品があった。

    それはケースに入ってない、むき出しの黒いVHSのビデオテープ・・・。

    いまどきVHSのビデオテープって需要あるんかな?と思って手にとって見てみたら・・・

    そこには手書きのラベルが貼ってあり・・・・手書きの文字で・・・こう書かれていた・・・・。


    「ロボコップ」


    ちょwwww ロボwwww コッwwww プwwww ってww

    いやいや・・・・これTVでやってるのを録画したやつちゃうん?www
    CMとかそのまま入ってるやつちゃうん??w え?これ100円??

    でもちょっと興味あるわ・・・ほんまにロボコップ入ってるのかめっちゃ気になるわ・・・・!w

    って思ったことを思い出し、それを言おうとしたがよく考えたら今の話と全然関係ない。

    けどおもろいしな、言おかな。

    京橋秘話19

    メルウィブは、優雅な仕草で生ジョッキを煽りながら、「ロボコップ」という言葉だけを心の中だけで反芻したが、いちからこの話を話すのが急にめんどくさくなった。

    そして固唾をのんで答えを待ってるふたりに、不適な笑みを向ける。

    メルウィブ 「せやな・・・内緒や・・・w」

    ナナモとカヌエは眉を寄せ、ヒソヒソ囁き合う。
    「メルねー絶対なんかあるんちゃうあれ・・・・。」「あれ、全然関係ない事考えてる時の顔やで」

    それを華麗に聞き流して、メルウィブはジョッキに手を伸ばす。

    ・・・・・と、その耳がある足音を捕らえて、ピクリと震えた。

    メルウィブ 「さて・・・・遅れとった人が来よったで・・・」

    ナナモとカヌエも囁きを止め、入り口のほうを振り返る。

    その視線の先に現れたのは---当然・・・・


    ナナモ 「ちょっっ!!」




    京橋秘話000
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