
「なるほど。そういう事になったのか・・・。」
「はい・・・。ヤジマさんは脚本を降りました。マイディーさんも意気消沈の様子ですね・・・。なのでもう少しゲームに理解がある脚本家を探そうかと思っています。」

「ああ、そうそう。PS4買ってやってみたよ、FFXIV。」
「おっ?そうなんですね。」
「ゲーム自体がほぼ初めてだから・・・最初の町から出るのに数時間かかったよw」
「ゲーム自体初めてだと そうなるかもですねw」

「お父さんを真似て弓で始めてみたよ。」
「へー・・・どんな感じです?」

「LV9になったから、早速クルザスってとこにも行ってみた。」
「おおっw」
「何度も死んでしまって苦労したよ・・・。でも・・・
たしかにあの町で半袖は恥ずかしい・・・。そういう感情にはなった。」

「お父さんが恥ずかしいからやめたいと思ったのは・・・ずっと社会を生きてきて、それなりの立場やプライドもある自分が、ゲームとはいえ多くの人の前で、 着替えさえできない という恥ずかしさと情けなさを強く感じてしまったんだろうね。」
「・・・・・。」
「周りの人が当たり前のように出来る事が、自分には出来ない。
ひょっとすると無意識に これから老いていく自分をそこに重ねてしまったのかもしれない。」
「それは・・・やめたい気持ちになるかもですね・・・。
なるほど・・・そんな風に考えた事は無かった。」

「きっとこのドラマを監督して作っていくには・・・今自分が経験している・・・初めてオンラインゲームに触れる お父さんの目線 も必ず必要になると思うんだ。」
「お父さんの目線・・・。」
「うん・・・。今回のドラマは色んな事が初の試みになるから・・・
だからこそ 目線が一人に偏らず に 様々な目線 が必要になってくる。
だから・・・完成させる為に必要なのは・・・
みんなで一緒に物を作る環境なんじゃないかな。」
「監督・・・。」
「まあ作れるかどうかはまだわからない所だから・・・
もうしばらく自分のペースで続けてみるよw」
人は 「夢」 をみる。
希望・・・ 憧れ・・・
こうなれたらいいな・・・・ こうだったら幸せなのにと・・・・ 人は様々な「夢」を想い描く。
そして その「夢」が「目標」に変わったとき・・・
新しい冒険が始まるのかもしれない・・・・。
この物語は・・・・
「ゲームプレイブログのTVドラマ化」
という、 前人未踏の夢に【挑戦】する・・・
ひとりのゲームブロガーと、
ひとりのプロデューサーの物語である。

「マイディーさん、もう大丈夫なんですか?胃腸炎。」
「ごめんね、心配かけたねー・・・もう大丈夫だよ。」
ヤジマさんが持ってきたシノプシスをお断りしてからというもの、光のドラマ化計画はなんの進展も無い・・・。
あの後、マイディーさんは胃腸炎で高熱を出したらしい。ストレスとかそんなのではないよと言ってたけど。
ほんとの所はわからない。
最近はマイディーさんもドラマの話をあまりしなくなってきた・・・。
ずっと一人で考えて込んでいる様子・・・。

あの後、私達はヤジマさんが脚本を降りたという話を、ぴぃさんから聞かされた。
ぴぃさん・・・また新しい脚本家を探してくると言ってたけど・・・あれから全然音沙汰が無い・・・。
このまま光のドラマ化計画もやんわりと終わってしまって・・・普通の生活に戻るのかな・・・。
とかそんな事を考えていたら・・・。

「あるさん!あるさんっ!」
「ぴぃさんっ!?」
「ちょっといいですか?」
久しぶりに見たぴぃさんは、嬉しそうな顔でじょびハウスにやってきた理由を教えてくれた。

「えっ!? 新しい脚本家 を連れてきたっ!?
みつかったんですね!新しい脚本の人!」
「はい・・・。まあ・・・みつけたというか・・・思い出したと言うか・・・。」
「え?でも大丈夫なんですか?また前みたいな脚本だと・・・」

「大丈夫です。今回はそのあたりは・・・完璧だと思いますよ・・・。」
「で・・・どこにおられるんです?その新しい脚本家さん・・・」

「上ですっ!」

「上?」

「・・・イイイイイイイイーーーーッ」

「ヤッハアッ!」

「うわああっ!!」

「なっ!なにっ!?」

「始めまして、新しい脚本家です。」
「ええええーっ!?」

「実は彼・・・昔、映画業界にいた頃に 私が雇っていた元アシスタントでしてね・・・。」
「なつかしっすねー!」

「それが今や、役者をやりつつドラマや舞台の脚本も書くようになりまして・・・最近は、脚本家として売れてきてるんですよ。」
「そ・・・そうなんですか・・。」

しかも彼は・・・ゲームを こよなく愛しており・・・色んなゲームをプレイしている。
その事を思い出した私は、なんとなく彼に脚本をやってみないかと声をかけてみたんです。
すると驚くべき事実が発覚しました・・・。

なんと彼は・・・現役のFFXIVプレイヤー・・・
「光の戦士」だったんです・・・
言わば・・・

「光の脚本家」だったのですっ!!

「光の・・・脚本家!」
「はい。新生してすぐに昔からの友達4人でスカイプしながら始めたんですよ。」
「おおっ!」
「でも色々あって・・・しばらく休止してたんです・・・。」
「いろいろ・・・」
「はい・・・。」

「ガルーダに全然勝てなくて嫌になって、そっからずっとウイイレしてました。」
「え? 大丈夫ですかw」

「でも・・・今回マイディーさんのブログを読んでまたやってみようと思って復帰しましたんですよー。」
「で、彼が今回シノプシスを書いてきましたので、一度マイディーさんにも見て頂きたいなと思いまして・・・。」
「わ・・・わかりました。聞いてみますね。」
私は早速、事の次第をマイディーさんに伝えた。
前の事もあるので、だめだ!って言うかなって思ったけど・・・

「僕もちょうどぴぃさんに話があるから・・・いいよ。」
マイディーさんは、意外なほどあっさりとOKを出し・・・

第二回脚本打ち合わせが行われる事になった・・・・。
マイディーさんと、リューハラさんは軽く自己紹介を行い、ぴぃさんから経緯が説明された。

今回のシノプシスは事前にぴぃさんがリューハラさんに注文を付けて発注した事。
その注文は、ブログに添ったストーリー展開で作る事。
ステレオタイプのオタク像を抱かせないキャラクターにする事。

そして出来上がったシノプシスをぴぃさんがチェックし、何度かやり取りして今回のシノプシスは完成したという事が告げられました。

一通りの説明が終わり、リューハラさんが書いた新しいシノプシスが配られた。
早速、私も不安半分、期待半分で目を通してみました・・・・。

光のお父さん計画。
それは、60歳を越えるゲーム好きの父にFF14をプレイしてもらい、自分は正体を隠してフレンド登録。
共に冒険を続け、いつの日か自分が実の息子である事を打ち明けるという壮大な親孝行計画である。
おなじみのあのナレーションで始まる第一話・・・。
なんかこれが入ってるだけで光のお父さんっぽい感じですね・・・。

「名前はどうする?実際の名前は駄目だよ。」
「じゃあ・・・・いのうえ。」
あ・・・これ最初の名前を決めるシーンだ・・・!

「きりんセット!・・・ゴー!!」
「にゃんにゃんぷ~♪」
わ・・・私達じょびメンバーもちゃんと実名で登場してる!!
きりんちゃんや じょびのメンバーの描写もブログのイメージが出てる・・・
リューハラさんかなりブログを読み込んでる感じ。
ブログでは描かれていない マイディーさんの私生活部分は創作だけど、普通に働いている設定になってる・・・・。
これは・・・すごい・・・前の脚本と全然違う・・・!!

「頑張りましたね・・・お父さん。」
最終回は、お父さんへの告白シーンでちゃんと終わっている・・・・。
リューハラさんが書いてきた脚本は・・・ほぼほぼブログ通りに描かれていた。

でも・・・・

マイディーさんの人物像も・・・普通に一般的なオンラインゲーマーっぽく書かれてる・・・。
内容もブログどおり・・・・・。
こんなシノプシスを待っていたはずなのにな・・・。
なんだろう・・・この読後の・・・・違和感・・・。
私だけかな・・・・マイディーさんはどう感じてるんだろう?

む・・・難しい顔をしてる・・・・。
なんでだろう・・・ブログ通りの脚本なのに・・・・。

「あんまりおもしろくないでしょ?」
「!」

「・・・・はい。
僕も今・・・書籍版を書きながら・・・多分リューハラさんと同じ所で悩んでいます・・・・。」
「やっぱりw」
え・・・・?なに・・・?

「【話数】と【ページ数】の問題・・・。」
私がよほど きょとんとした顔をしていたからか・・・
リューハラさんがこのシノプシスの問題点を、わかりやすく説明してくれた。

【光のお父さん】はドキュメントである。
しかもお父さんの進行に応じて、連載を重ねてきた。なのでライブ感があっておもしろく感じる。
本来、ドラマや書籍を作るときは、あらかじめ決まった【話数】や【ページ数】が決まっている事が多く、予め作品のテーマや着地地点を決め 全体のバランスを考え「構成」を行い物語を作っていく。

しかし、【光のお父さん】はこの方式で書かれていない。
マイディーさんはお父さんとの旅を通じて、色んな事に気づき進んでいく物語として最終回まで書かれている。

ブログ【光のお父さん】は、ブログ連載という性質上、話数やページ数の制限が無く、好きなだけ大きな出来事や小さな出来事を描き積み重ねる事ができた。
そして全ての出来事を通して全体的な「テーマ」が生まれている。
・・・ところが!
これを尺の決まったドラマや書籍にしようとすると勝手が変わってくる。

ドラマなら1クール、書籍なら270ページにこれをまとめなくてはいけなくなる。
ブログの物語をこの決められた枠内で、始まりから終わりまでをきっちり描こうとすると・・・

どうしてもこのような形になってしまう。

「なので自分が持ってきた今回のシノプシスは・・・ダイジェスト感 が否めないんすよ。」

それだ・・・!!
違和感はそれだったんだ・・・・。
たしかに・・・表面的な出来事は【光のお父さん】だったけど・・・
お父さんの喜びや面白みが全体的に軽いんだ・・・。
ただ原作の印象深いシーンを 無理になぞっただけの・・・ドラマになってる。
これでは感情移入ができず・・・ただバタバタしているだけのドラマみたいな感じなっちゃうってことなんだ。

「1話から順に忠実にドラマ化していけば良いんでしょうが、そんな予算も力も・・・今の我々には無い・・・。1クールでちゃんと着地しないと視聴者もあれ?ってなる。」

「それを解決する方法は・・・ただひとつ。」
「そうです。マイディーさんが出した結論と同じ。」

「僕の体験を元に・・・【光のお父さん】をドラマ用に書き直す。」

「そうです!でも大事なのはブログの出来事を尺を短くしてどこまで再現するかじゃない・・・。
何よりも大切なのは、マイディーさんがあとがきに書いた言葉をどう練りこむかだと思うんです。」
「オンラインゲームというのは悪い事ばかりじゃないんだよ。
考え方や受け取り方、活かし方で 人生においてこんなに素晴らしい物になるんだよ。」
僕は「光のお父さん」を通してそれを言いたかったんだと思います。
マイディーさんがお父さんに行った親孝行を元にオンラインゲームで関係を修復した事実を元に、ドラマを見た視聴者がそう感じないと、【光のお父さん】をドラマ化する意味が無いんですよ。

僕も脚本をやるからには・・・ただのダイジェストドラマにしたくない。
マイディーさんとお父さんの旅を通じて・・・
見終わった後に「ああ、やっぱゲームっていいよな。」って思えるドラマにしたいんです。
子供のころからずっと・・・ゲーム・・・大好きですしね。

「私も彼の意見に同意見です。しかし我々だけで作ってしまっては今回のシノプシスのように偏りがでてしまう。たくさんの目線を持って脚本を作っていく必要があります。それで・・・」

「わかってます!
僕も今日、それをぴぃさんにお願いしようとおもってましたw」

「僕達も脚本開発に参加させてくださいっ!!」

夏が始まろうとしている6月の下旬。
ドラマ【光のお父さん】の 本格的な脚本開発が始まった。

まずはリューハラさんがシノプシスと脚本を書き、それをマイディーさんとぴぃさんがチェックするという体制でスタート。
ぴぃさんが言うには、8月の初旬、製作委員会に加わろうと考えている人達に脚本を見せなければいけない。
あまりゆっくりと作る時間は無かった。
ぴぃさんはリューハラさんにほんとにできるのか?と念を押して聞いた。
するとリューハラさんは・・・

「伝説を作ってやりますよ!」
・・・と竜騎士らしい面持ちで答えてくれた。
それは・・・私達が再び歩き出す為に必要な、とても頼もしい一言だった。

実際にリューハラさんの筆は驚くほどに早かった。
次々と脚本ができあがってくる。

マイディーさんもどんどん意見を出し、何度も何度も書き直しが行われた・・・。

徐々に練りあがっていく脚本・・・
リューハラさん自身が、ゲームが好きという事も大きく、作り上げられていくのは、一般人の普通の生活の中にオンラインゲームがあるという風景、私達がいつも目にしている本当の風景。

【光のお父さん】のストーリーに添って・・・オンラインゲームの楽しさが伝わってくるようなお話。

みんなで一緒に作っていくという環境。
いろんな目線から練られていく脚本。
そしてその脚本は・・・自然に・・・とても自然に・・・・
【光のお父さん】の形を成し・・・・
それでいて・・・・
私達が毎日読んでいる・・・・
「一撃確殺SS日記」の空気を宿していった・・・・。
ほぼ連日行われた本打ち合わせ・・・

「本当にありがとうございましたっ!なんの問題もありません!これでオールOKです!」
原作者の最終確認が終わり・・・・。

いろんな人の想いを、光の脚本家リューハラさんがまとめ、それを詰め込んだ物語は希望に満ち溢れている。
一度は折れそうになった、ドラマ化への夢。
私達は、激しい痛みに耐え・・・また少し前に進む事ができた。
私達が再び歩もうと思えたのは、心から信頼できる仲間が一緒に歩いてくれてるからなんだな。
それもまた、私達が好きなオンラインゲームが教えてくれた事なのかもしれない。
リューハラさん・・・本当にありがとうございました。

「あー!終わったー!帰ってウイイレしよ。」
「もうっ!ガルーダ倒しに行きましょうよw」

企画書、パイロットムービー、脚本が完成。
各企業はそれらを元に参加を決定。製作委員会結成が間近に迫る。
「時は来ました。SQEXに再度赴き、一緒に吉田P/Dの最終承認をもらいに行きましょう。」

「どうしても、吉田P/Dに会わないと駄目ですか?」
今まで非対面にこだわり続けたマイディーさんは悩む・・・。
そしてマイディーさんはどうしても非対面貫こうとする理由を私達に語った。
次回 光のぴぃさん 第13話
「それは僕にとって決断の時だった。」
おたのしみに。
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