
「まいでぃ~さ~ん♪ まいでぃ~さ~ん♪」
「はいはい・・・」

「きりんの声は誰がやるか決まりましたか~?」
「きりんちゃん・・・それが決まるのはもうちょっと先かな?
まだドラマになるかどうかも決まってないからね・・・?」
「は~い♪」
【5分後・・・】
「まいでぃ~さ~ん♪」
「はいはい。」
「きりんの声決まりましたか~?」

「きりんちゃっあのっ!まだ 5分しかたってないね?
声が決まるのはまだまだずっと先だねー。決まったら教えてあげるからね~。今ちょっと大事な文章書いてるので、遊んでおいでー。」
「は~いです♪」
【20分後】
「まいでぃ~さ~ん♪きりんの声決まりましたか~?」
「あーーっ!もうっ!!決まった決まった・・・決まったよっ!」
「誰ですか~っ!」

「・・・神谷明。」

「知らない人ですね~。新人さんかな~??
アキラちゃんは何の役をやってる人ですか~♪」
「ごめ・・・ちょと今忙しいから・・・」
人は 「夢」 をみる。
希望・・・ 憧れ・・・
こうなれたらいいな・・・・ こうだったら幸せなのにと・・・・ 人は様々な「夢」を想い描く。
そして その「夢」が「目標」に変わったとき・・・
新しい冒険が始まるのかもしれない・・・・。
この物語は・・・・
「ゲームプレイブログのTVドラマ化」
という、 前人未踏の夢に【挑戦】する・・・
ひとりのゲームブロガーと、
ひとりのプロデューサーの物語である。

マイディーさんが書籍の執筆を始めて数週間が過ぎた・・・。
最初は無理に思えた、「光のドラマ化計画」はスタートから6ヶ月が過ぎ、少しずつではあるけど実現に向かって前進している。
ゴールデンウィークが過ぎ、また平穏な日常が始まった5月の中ごろ、久しぶりにぴぃさんがじょびハウスにやってきた。

「こうやって顔を合わせるのはお久しぶりですね、マイディーさん。執筆の方は順調ですか?」
「タカダさんがすごく親切に教えてくれているのでなんとか・・・ところで製作委員会の方はどうですか?」

「こちらも順調ですね、パイロットムービーの効果はすごいです。まだお知らせする所まで進んでませんが決まれば大変なことになりそうですよw」
「それは楽しみですね。で、そちらの方は?」

「あ、すいませんご紹介が遅れました・・・こちら脚本家の・・・ヤジマさんです。」

「始めまして。作家のヤジマです。ぴぃさんからマイディーさんの【光のお父さん】のドラマ化を進めてると聞きまして・・・ぜひ脚本をとお願いしたんです。お会いできて光栄ですよ。」
「光栄だなんてとんでもないですっ!ただブログやってるだけのゲーマーなので・・・。」
その脚本家さんは、とても物静かで知的な感じがしました。
いろんなドラマや舞台なんかの脚本を手がけてきたベテランさんだとぴぃさんからご紹介を受けました。

「まあ今回彼を連れてきたのは・・・製作委員会も形になろうとしている今、そろそろ脚本が必要な時期だなと思いまして打ち合わせに来ました。」

「脚本製作!!もうそんな段階なんですね!」
「脚本がないと、先には進みませんしね。」

「そのとおりです。本来であれば出資営業に脚本が必要になってくるんですが、【光のお父さん】はブログがありますし、作っていただいたパイロットムービーがあれば、どんな事をしたいのかという意思は出資者に充分伝えられます。」

「しかしこの先のキャスティングはそうは行きません。俳優さん達は実際にどんな台詞をしゃべるのか、がとても重要になってきます。自分のする役が実際にどんなイメージの役柄なのかがわからない事には俳優さんもその仕事を受ける事ができませんからね。
ここから先は脚本が無いと進めない領域なんですよ。」

「なるほどなあ・・・・。重要なんですね、脚本!」

「そうなんです。そして脚本というのは誰でも書ける訳ではありません。その内容にかかる予算や、撮影技術の可能不可能。そういった事を熟知していないと書けません。」
「例えば、『金持ちのライバルがフェラーリで登場。』とかって文章なら自由に書けるけど、実際にそれにかかる予算なんかも頭に入れて書かないと駄目って事か。」
「簡単に言うとそういう事です。」

「その分、彼は実績もあります。きっと素晴らしい脚本を書いてくれるでしょう。」
「そうですね。私も今回の【光のお父さん】を楽しく拝見させていただきました。早速全話の シノプシス を作ってみようと思っています。」

「シノプシス・・・また難しい言葉が・・・」
「全話のあらすじみたいなものです。1話から話がどのように進んで、全体を通してどういうストーリーラインになるのか。各話のテーマや内容をまとめた物ですね。」

「各話のダイジェスト脚本みたいなものかな。」
「そうですね。」

「【光のお父さん】は、親子愛という普遍的なテーマを持っています。ですのでそれを前面に出して書いていこうと思うのですが・・・マイディーさん・・・ひとつだけ先にお話させてください。」
「?」

「マイディーさんは原作者として、今回のドラマ・・・ヒットさせたいですよね?」
「そりゃ・・そうですね、多くの人にオンラインゲームの素晴らしさを知ってほしいですし・・・」
「では質問です・・・今マイディーさんがおっしゃった『多くの人』とはどんな人ですか?」
「ど・・・どんな?」
「それは・・・まだオンラインゲームを知らない人や・・・良いイメージを持ってない人かな。」

「ドラマ化は、それが重要なんです。」

TVドラマともなると、
趣味で作る自主制作映画とはまったく意味が違ってきます。
世の中を「光のお父さん」を知ってる人、知らない人にわけると圧倒的に知らない人が多い。
オンラインゲームで遊んでいる人と、遊んでない人にわけると圧倒的に遊んでない人の方が多い。
ヒットさせるためには・・・どちらに向けて作品を作ればいいのか・・・

それはもちろんこちらになってきます。
原作になる作品が、有名な漫画であったり、誰でも知っているような名作のリメイクとかでしたら、その作品を知っている人に向けて作品を作っても採算は取れるでしょう。
しかし・・・【光のお父さん】は、残念ながら作品を知っている人を対象につくり、その全てを取り込んだとしてもヒットと呼べるかどうかは疑問です。
つまりどういうことか・・・

【光のお父さん】の内容をもっと一般受けするようにアレンジする必要があるという事です。
私もプロとしてこの作品に携わります。
もちろん私だけでなく、ここにいるぴぃさんも、出資者達も、ドラマを制作する人たちもヒットする為に収益を得る為に携わります。
ですので・・・最初にお断りしておきます・・・・。
「そのままドラマになんかできませんよw」

圧倒された・・・・。
ヤジマさんの言っている事は、全て理解できた・・・・。
今まで好きな漫画が、アニメ化やドラマ化された時、全然違う内容に改変されると私は怒っていた・・・・。
でも・・・・これが・・・・現実なんだ。
マイディーさん・・・・。またなんだとコラー!って怒ったりしないか・・・な。

「わかりました。ちょっと僕にはわからない部分なので・・・一度ヤジマさんにお任せします。」
マイディーさんも歯切れの悪い回答だった・・・・。

ぴぃさんとヤジマさんは戻られ、シノプシスが完成したらもう一度集まってミーティングを行うことになった。

「マイディーさん・・・・なんだか不安な雲行きになりましたね。」
「別にドラマ化が無くなったわけじゃないし・・・とりあえずシノプシスを見てみようよ・・・・。」
「ヤジマさんの言ってる事が正しいのはわかるんですが・・・なんかこうもやっとするものが・・・・」
「そうだね・・・どんなのが出来てくるのか・・・・」

「マイさん・・・おそらく次の打ち合わせが・・・マイさんの分岐点です。」
「うん・・・。」
「マイさん・・・なぜドラマを作るのか・・・マイさんは何がしたいのか・・・どんな状況になってもそれを忘れてはいけないと思います。」
「ちなみちゃん・・・・。」
そして・・・その日がやってきた。

再びぴぃさんと、ヤジマさんがじょびハウスを訪れました。
私は、二人を応接室にお通しし、光のお父さん脚本打ち合わせ(本打ち)が始まったのです。

「では本打ち始めます。その前に現状と今後の流れを少し説明させて頂きます。」

今回の打ち合わせは、ヤジマさんの作った全話シノプシスの発表。
私とマイディーさんが内容を確認しまして、OKがでれば脚本の製作を開始。そしてこれが完成すれば・・・
いよいよ、リアルパートに出演する俳優の選出、及びエオルゼアパートでの声優の選出に入ります。
企画書、脚本、出演者の候補がそろった段階でSQEXに最終的なOKをもらい、製作委員会を結成。
結成が完了すればドラマ化が決定、製作がスタートします。

ですので、本日の本打ちで私プロデューサーと原作者のマイディーさんがOkを出しますと、その後ドラマ化に向けて一気にいろんなことが動き出す・・・というイメージですね。
では、早速ヤジマさん。全話シノプシスの発表をお願いします。

「はい。今回のシノプシス製作にあたり、原作にはない部分として以下の部分を加えました。」
■ 主人公の背景
・原作の問題点 この物語の主人公である「僕」がどんな人間なのかわからない。
・主人公の名前や経歴、人間像等のディティールを視聴者にイメージさせる背景やエピソードの追加。
■ 登場人物の追加
・原作の問題点 リアルパートの登場人物が僕、父、母の3名だけで絵的に地味になる。
・じょびメンバーのリアルの姿を作り、エピソードに盛り込んでいく。これにより場面の転換等が可能になる。
■ 物語の盛り上がりの追加
・原作の問題点 親子愛のテーマなのかオンラインゲームがテーマなのかわかりずらい。
・両方のテーマを追う事は話数の制限上不可能なので、茶の間ウケする親子愛にテーマをしぼる。
・親子愛を盛り上げる為の演出、エピソードを追加。
以上の3点をアレンジ、追加いたしました。

今回もヤジマさんがおっしゃってる事は、全部納得できた。マイディーさんも何も言わずうなずきながら話を聞いている。
その説明の後、ヤジマさんが作ったTVドラマ【光のお父さん】のシノプシスが配られた・・・・。
それは・・・こんな物語だった。

主人公、トオルは、ゲームが好きな20代の男性。
子供の頃、父にファミコンを買ってもらってからはゲーム三昧の人生。将来はゲームクリエイターになりたいと思っていたが、ゲーム会社への就職に失敗・・・その事がショックで引きこもりとなる。

トオルは部屋に引きこもり、オンラインゲームFFXIVにはまる。
そこではたくさんの仲間がトオルを褒めてくれる心地よい世界・・・ますます引きこもりに拍車がかかるトオル。
ゲーム中はペットボトルをトイレ代わりに、暗い部屋の中夢中でFFXIVの世界に没入していく。
しかし、ふとしたきっかけで父が「末期癌」である事を知る。
父が余命数ヶ月と知ったトオルは父との絆を取り戻すため、父をFFXIVの世界に誘う。
そして引きこもりである自分の正体を隠し父との接触を試みる。
父をFFXIVに誘い込んだトオルは、父と知り合い「光のお父さん計画」をスタート。
仲間達と共に正体を隠して父の冒険をサポートする。

その後の話は、トオルの所属する「FC:じょび」メンバーのエピソードも加わってきた。
アニメが好きで、部屋にアニメのポスターばかり貼っているアニメマニアのメンバー、ガイストさん (だれ!?)
太った容姿のフィギュアマニアだけど、エオルゼアでは超イケメンエレゼンでモテモテのラインハルトさん (だれっ!??)
彼氏いない暦38年、BLマニアの腐女子だけど、エオルゼアでは超人気のアイドルミコッテ ソフィーさん (だれっ!!?)
その子達の社会では駄目だけどオンラインゲームではかっこいいというエピソードがてんこ盛り。
TV用に誇張された「おたく感」。 それが強調されているエピソード。

そんなじょびメンバーに対し、ゲームの中では初心者だけど人生経験豊富な、お父さんがひとりひとりを更生させていくのが基本的な毎回の流れ・・・。
そして最後は・・・・。

「ネット依存が深刻化する現代において、その鎖を断ち切り社会復帰するという内容は茶の間にもウケがいいでしょう。」

「あの・・・それはいいんですが・・なんというか・・・その・・」
エピソードも・・・何もかも・・・・私達にとってはとても屈辱的な内容だった・・・。
これが・・・お茶の間の望むドラマなのであれば・・・私達は・・・何なの?
それを覆すのが・・・光のお父さんなんだと・・・・思ってたのに・・・。
でも、これがお茶の間にウケそうだっていうのも・・・わかってしまう自分がいる・・・。
言い返したいけど・・・そうするとドラマ化がどうなるか・・・・
なんかもう・・・涙が出そう・・・・。
私が言葉に出来ないでいると・・・・マイディーさんが顔を上げて言った。

「・・・・・死んでません。」
「!!」

「父は死んでません・・・
今も、今この時も癌を克服して毎日エオルゼアで楽しんでます。」
「いやまあそうですが・・・これはドラマなんでw」

物語の最後は・・・お父さんが癌で亡くなるシーン。
それをきっかけに仲間と一緒に社会復帰を成し遂げるという・・・たしかにドラマとして見たら・・・感動する事は間違いない・・・そんなドラマだけど・・・。
「もともと・・・光のお父さん計画は親孝行になればと思って始めたことです・・・。」

それをドラマにしてくれるのは嬉しいですし、たくさんの人がそのドラマを見てオンラインゲームや親子の事いっぱい考えてくれるのは僕の夢でもあります。
ですが・・・

「ドラマをヒットさせる為に・・・
僕の父を死んだ事にするんですかっ!?」

「お茶の間の人たちが感動してくれたとしても・・・癌を克服して今も頑張っている父は・・・」

「僕の父は・・・どんな顔をして・・・そのドラマを見るんですか・・・・
父が悲しい顔をして見るドラマ・・・・
それは・・・・【光のお父さん】ですか?」

「しかし・・・これはビジネスですし、ヒットする作品にしないと・・・・
その為には一般の人が喜びそうなですね・・・」

「プロデューサーの意見は!?」

「売れるドラマを作るのがプロデューサーの仕事です・・・。」
「!?」

「ですが・・・今回は・・・原作者様のご判断に一任します。」

「ドラマ化に向けてストーリーを一般の人も楽しめるようにアレンジする・・・その必要性はわかります。
ですが・・・売れる為ならその根本すらもひっくり返さないといけない。

・・・そういう考えが必要なのであれば・・・僕にはドラマ化をこれ以上進める事が・・・できません。」

「今まで・・・ありがとうございました。」


「ちなみちゃん・・・夢は・・・見ている時が一番幸せなのかもしれないね・・・。 それを現実のものにしようとすると・・・こんなにも心が痛くなるんだね・・・。」

「そうですね・・・きっと・・・・その激しい痛みを受けても、それに耐えぬいて前に進める人だけが・・・

夢をつかむ事ができるのですよ・・・。」

夢に向かってひた走った6ヶ月、光のドラマ化計画。
夢は夢のまま終るのか・・・・。
しかし・・・ぴぃさんはまだ諦めてはいなかった・・・。
昔なじみの映画監督のもとに相談を持ちかけるぴぃさん。
「ぴぃくん。必要なのは、みんなで一緒に作るという環境だと思うよ。」

新たな決意を胸に・・・ぴぃさんは・・・再びじょびハウスを訪れる・・・。
謎の【竜騎士】を連れて・・・。
竜騎士は、口元に笑みを浮かべながらポツリと言う。
「伝説を・・・作ってやりますよ。」
次回、光のぴぃさん 第12話
「それは、再び歩き出す為に必要な 頼もしい一言だった。」
おたのしみに。
- 関連記事
-
- 光のぴぃさん関連の事 その4 (2016/12/13)
- 光のぴぃさん第12話 「それは、再び歩き出す為に必要な 頼もしい一言だった。」 (2016/12/12)
- 光のぴぃさん第11話 「それは、【光のお父さん】ですか?」 (2016/11/28)
- 光のぴぃさん第10話 「それはちょっと無理かも・・・と思ったけどやるしかなかった。」 (2016/11/14)
- 光のぴぃさん第9話 「それはこの世界の可能性を広げる為の戦いだった。」 (2016/10/24)