
【光のドラマ化計画】の企画書が完成し・・・1ヶ月と少しが過ぎた。
光の戦士たちが、いろはすを片手にエオルゼアを走り回っていたこの頃・・・
マイディーさんは「光のお父さん」の最終回を書き上げ、ほっとひと段落。
ぴぃさんは、企画書が完成し、いくつかの企業に対してアプローチを進めているらしい・・・。
そして・・・私は・・・・

「あああああああああああああああああああああああ」
「あああああああああああああ」
「ああああああああ・・・・・」

「あ」の数が13文字までならリップシンクは1秒。
14文字~33文字までが 2秒・・・・。34文字以上は 4秒か・・・。
・・・・ということは・・・6秒のリップシンクが必要な場合は・・・
ああああああああああああああああああああああああああああああああああ
<wait.4>
ああああああああああああああ
あ×34 (4秒) + あ×14 (2秒)=6秒のリップシンク
これ、秒数別でマクロにしてフォーラムで共有したほうがいいよね・・・。
ドラマ化する事になったら、私たちの演技に声優さんが声を入れてくれるらしいから、台詞の長さに合わせて口パク長さを調整しないと不自然だよね・・・台詞に合わせて、ささっとマクロが使えるようになっておかないとなあ・・・。あぁ・・・プレッシャーだなあ・・・。

この頃、私たちは来るべきエオルゼアパートの撮影に向けて、台詞に合わせたリップシンク(口パク)や、エモートを使った演技の練習を始めていた・・・・。
「ああああああああああああああああああああああ」
私の声・・・どんな声になるのかな・・・・?
人は 「夢」 をみる。
希望・・・ 憧れ・・・
こうなれたらいいな・・・・ こうだったら幸せなのにと・・・・ 人は様々な「夢」を想い描く。
そして その「夢」が「目標」に変わったとき・・・
新しい冒険が始まるのかもしれない・・・・。
この物語は・・・・
「ゲームプレイブログのTVドラマ化」
という、 前人未踏の夢に【挑戦】する・・・
ひとりのゲームブロガーと、
ひとりのプロデューサーの物語である。

「ただいまー・・・・。」
「おかえりなさい、ぴぃさんとの打ち合わせどうでしたか?」
「う~ん・・・今回も苦戦らしいよ・・・」
「また例の部分です?」

「そうだね・・・・。」
「・・・・・・。」

このところ、ぴぃさんは【光のドラマ化計画】に出資してくれる企業を求め、忙しそうに飛び回り、いろんな所に営業をかけてくれていた。
行く先々で【ファイナルファンタジー】という題材、【光のお父さん】の内容にはみんな関心を示してくれる・・・。
でも・・・

「ゲームの中でドラマを撮る??エモート??はあ、そういうのがあるんですねー。」
・・・というなんとも ピンと来ない感じ が伝わってきて決定打に欠ける・・・といつもおっしゃってました・・・。

【光のお父さん】をドラマ化する場合、
エオルゼアのシーンはエオルゼアで撮る。
多分これは、【光のお父さん】のドラマを作るにあたり、間違いなく最善の策だと言える・・・。
しかし、そう思えるのは私達がオンラインゲームに慣れ親しんでいるからに他ならない。

この世界に長くいる私たちは、その感情を「エモート」で表現する。
泣いたり笑ったり、怒ったり。そういった感情を「エモート」機能を使ってキャラクターに動作させる事で相手に気持ちを伝える。
なので、これらを使って演技するんだ、という発想は するりと想像でき、おもしろそう!と思える。

でも・・・
よくよく考えてみたら、私たちが日々当たり前のように使っている
「エモート」は、オンラインゲーム独特の文化・・・。

オンラインゲームを遊んだ事の無い人が想像する一般的なロールプレイングゲームだと、一緒に旅をする仲間は人ではなくプログラムなのだから、感情を伝える必要が無い・・・。
なので、FFやドラクエを遊んだ事があるよという人でも、「エモート」の意味する所がピンと来ないらしいのです・・・。

そんな状態だとぴぃさんから聞いたマイディーさんは、エオルゼアパートに理解を示してくれない企業に対しダミーブログ上に、FFXIVのエモート機能や視線移動、リップシンク等の色々なコミュニケーション機能をまとめた記事をアップ。
その記事を用いてぴぃさんがプレゼンを行う事で、出資者達はなんとかエオルゼアパートの仕組みを理解してくれるようにはなった。
しかし、理解はしてくれても「感動」を与えるまでには至らなかったのだ・・・。
いくら「へぇー」と理解してもらっても、それだけでは数百万とか数千万というお金の出資するまでには至らない。

出資者達を「感動」のレベルまで持っていかないと、この計画の成功は難しい・・・。
私達が、あのブレイフロクスの夕焼けを見て閃いた時くらいの「感動」を与えないことには・・・出資は期待できないであろう。
そう、ぴぃさんは私たちにおっしゃってました・・・。

「こんな事で躓くなんて・・・。この国では未だにオンラインゲームプレイヤーが少ないんだって事を痛感するよ・・・。」
「でもっ!このドラマが成功すれば!もっと増えてくれるかもしれませんよっ!オンラインゲームプレイヤー・・・。」

「まあ・・・そのドラマを作るのに今困ってるんだけどね・・・」
「ですよね・・・w あぁ・・・。」
「なんか・・・このままフェードアウトしていきそうな空気になってきたね・・・この企画・・・。」

「・・・・・。」
マイディーさんの言うとおり・・・
ここでエオルゼアパートに誰も理解を示してくれなかったら・・・・
ここで【光のドラマ化計画】はこのまま消えてしまいそうな気がする・・・・。
「なんとか出資者の人達をぴぃさんが説得してくれるのを期待するしかないね。」
「そうですね・・・そこはぴぃさんに任せるしか無いですしね・・・
何か私たちに力になれる事があればいいんですが・・・」

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
とはいえ・・・
マイディーさんも黙っていたわけではなく、ダミーブログでプレゼン用の記事も作ったんだし・・・
これ以上私達に何ができるんだろう・・・・。
そんな、私達の出口の見えない焦りでリビングを重たい嫌な空気が包んだ・・・。

今は、黙ってぴぃさんの報告を待つことしかできないのかな・・・・。
何か私達に出来ること・・・ほんとに何も無いのかな・・・・
何か・・・何かしたい・・・。このまま終わるのはあまりにも悲しい・・・。
出資者の人達に・・・エオルゼアパートの感動を伝える手段・・・・
何か・・・何か・・・・・
その時でした・・・
「まだありますよ。私たちにできること。」

「ちなみちゃんっ!!」
「びっくりしたっ!せとちゃんっ!」

「今、長き眠りより目覚めました。」
ちなみちゃん・・・・・。
FC:じょびネッツア サブマスター・・・ せとちなみちゃん・・・。
2009年に、じょびネッツアに入団し・・・エオルゼアができるずっと前からマイディーさんと数々のオンラインゲームを共に渡り歩き・・・
今までマイディーさんの数々のピンチを救ってきたという・・・
じょびネッツアのレジェンド!!

「ちなみちゃん!私たちにできることって・・・?」

「エオルゼアパートの・・・
パイロットムービーを作るのです。私たちで。」
「パイロットムービー?」

「パイロットムービーというのは、制作会社が企画した番組なんかをスポンサーに説明する時に見せる、こんな感じになりますよーというサンプルムービーだね。」
「SSよりはイメージが伝わりますよ。」
「たしかにっ!」

「まあ僕もそれは考えたんだよ・・・でも、動画とかはあんまり撮りなれてないし・・・下手したらこの程度かよ・・・って思われてしまう・・・完成度の高いものにしないと、かえって逆効果になるからね・・・僕ら素人が作ったものでは・・・」
「たしかにっ!」
「SSはずっとやってきたけど・・・動画となるとまったくノウハウは別だしね・・・さすがに出資者を感動させるような代物は作れないと思うよ・・・」
「・・・・・・。」
「マイさん。」
「?」

「それは、私がやりますよ。」
「え!?」
「あ・・・・」

「そ・・・そうかっ!そうだった!!せとちゃんは・・・
お・・・お願いできますかっ!?」
「!?」

「はい。」
て・・・天使っ!!
こうして、私達は私達の力で、「パイロットムービー」というのを作ることになったのです。
でも・・・マイディーさんの言うとおり・・・私たちはプロじゃない・・・。
プロじゃない私たちが作ったパイロットムービーで・・・よし!これならお金を出す!ってなるのかな・・・。
不安だった・・・。
プロでもない私たちが・・・・でしゃばっていいものか・・・。
でも何もやらないよりはマシかもしれない・・・そんな風に私は思っていた。
しかし・・・それから数日後・・・
私のそんな不安は・・・
一瞬で吹き飛んだ・・・・・。

「パイロットムービーの絵コンテを切ってきました。これをもとに撮ります。」
ちなみちゃんが書いて来た絵コンテ・・・
そう・・・・
それは・・・・・・
まさしく・・・
まちがいなく・・・・・

プロの仕事だったんです・・・・。
絵がうまいだけじゃない・・・内容もわかりやすく・・・
それがどういうシーンなのか・・・どう繋がるのか・・・
それもちなみちゃんらしくしっかりとわかりやすく書き記されていた・・・。

「さすがです!これ通りに撮っていけばいい出来になりそうですね!」
「ではマイさん、コンテに演技プランを書き込んでください。あるちゃんは、みんなから撮影に参加できる日をヒアリングしてください。早速始めましょう。」
「はい!監督!」
「はいっ!」
なんか・・・すごい・・・ちなみちゃん・・・
「ちなみちゃんのお仕事って・・・」

「ないしょです。」
て・・・天使!!

パイロットムービーに選ばれたのは、【光のお父さん】第3話のマイディーさんが羅刹衝でお父さんを助けるシーン。
ちなみちゃんが作った絵コンテにマイディーさんが、ゲーム内のアクションを具体的に書き足し、演技プランを絵コンテに書き込む。
こうして、パイロットムービーの絵コンテが完成した。

絵コンテはまさにパイロットムービーの設計図でした。
マイディーさんがちなみちゃんの指示通り、カットごとに画面をキャプチャーしていく。
旧時代からエオルゼアにいるちなみちゃんが切ったコンテのアクションは、全てエオルゼアで実現可能なものばかり。プレイヤーの視点を持った良い絵コンテでした。
そして私達は、実際にその撮影を行う事で色々な新しいノウハウを見つける事ができた。

たとえばマイディーさんがゆっくりと振り向くシーン。
通常の視点移動だと、即座に向いてしまい、ゆっくりと振り向く事はできない。

そこで他のキャラクターがアシストに入り。カメラの後ろ側でゆっくりと移動。
そうすると、ゆっくりと首がまわり、ゆっくりと振り向いているシーンが撮れる。

走ってきて止まるシーンは、そのまま止まると急にピタっと停止してしまい、ゲームっぽさが出てしまい不自然に見える。

そこで、とまる瞬間に徒歩モードに切り替える。
そうすると、止まる瞬間に減速したように見え、自然な停止が可能。

表情エモートは単体で使用するよりも複合して使用したほうが演技に深みが出る。
素顔→不機嫌と1回で行うよりも、いったん感知を経由して素顔→不機嫌→感知とすることで自然な表情の変化に見える。

演技と口パクを同時に操作するのは結構難しい。
そこで私たちは、演技マクロの開発にいそしむ。
ちょっとちょっとー!そんなんじゃ全然駄目だよ!もっと本気でやらないとぉ!マクロ。
/shrug
/smirk
/say ああああああああああああ
/wait 1
/say ああああああああああああ
/alert
/say ああああああああああああ
/wait 1
/say ああああああああああああ
/huh
/wait 1
/smile
/wait 1
/chuckle
/say ああああああああああああ
演技マクロは普段からマクロを作るのが好きなメンバーも手伝ってくれて、撮影の手助けをしてくれた。

「このシーンの口パクはもう少し長めの方がいいですね。」
「長め・・・・「あああああ」をもっと長くすればいいのかな?」

「マイディーさん!「あ」の数は34文字でリップシンク4秒です!秒数言ってくれたら私マクロ作りますよっ!」
「おおすごい!!あるちゃん調べたの?」

ちなみちゃんの絵コンテにもびっくりしたけど・・・

めるくんが衣装を管理したり・・・

親方が撮影に必要な小道具を作ってくれたり・・・

みんなが出来る力を持ち合って、入念に準備してひとつの物を作っていく。
これはこれでオンラインゲームのひとつの形。
パイロットムービーの撮影は、まるで初見予習無しのエンドコンテンツに似ていました。
大変だけど・・・楽しい。
どこの攻略サイトを見ても、演技の仕方の解説なんて載ってない・・・。
ひとつひとつを私たちが作っていく・・・同じ気持ちを持って進んでいく。
オンラインゲームの可能性をもっと多くの人に知って欲しい。
この戦いは、その為の大きな一歩・・・ そう・・・
それはこの世界の可能性を広げる為の戦いでした。

「皆さん。おつかれさまでした。」
よくできたちなみちゃんの絵コンテ・・・
そしてそれを撮影するためにみんなが力を出し合った前準備・・・
そのおかげで・・・驚いたことに
撮影自体はわずか2時間程度で終了しました。

さすがに声は入れられなかったので、字幕で編集。
そして さらにそれにBGMをつける。

完成したパイロットムービーは、わずか1分程度のものでした。

しかし、実際にエオルゼアの中でキャラクターが演技をしてドラマを作っているというのが充分に伝えられる内容だった。

そして出来上がったパイロットムービーは・・・
充分、【光のお父さん】に・・・見えたのです。
みんなの持っている力を出し合って・・・みんなの想いを出し合って・・・・
それで完成したパイロットムービー・・・・。
そして私達はエオルゼアパートの撮影に向けての数々のノウハウも身につける事ができたのです。

完成したパイロットムービーは即座にぴぃさんに送信されました。
ぴぃさんはそのパイロットムービーを見て・・・

「これ、皆さんだけで作ったんですかっっ!?」
ってすごく驚いてましたw
すごいすごいとたくさん褒めてくれて・・・このパイロットムービーを使わせてもらいますねっ!!と言ってくれた。

お役に立てて良かった・・・・。
これで営業もうまくいってくれるといいな・・・・。
みんなで一生懸命作ったんだし、その気持ちだけでも伝わるとうれしいな。
そんな事を思い数日がたったある日の事でした。
「こんばんは。マイディーさんはおられますか?」

あー・・・・なんか久しぶりだな・・・この展開・・・・
今度はどんなお客様が・・・・・

エ・・・エレゼン族っ!!
な・・・なんだろう・・・なんだかすごくロマンスグレーな・・・・
でももうなんか・・・オーラでわかるようになってきたよ・・・

「ひょっとして出版社の方ですか?」
「ははは・・・よくわかりましたね・・・ぴぃさんのご紹介でやってきました。マイディーさんはおられますか?」

あー!!w たしかぴぃさん前にそんなこと言ってたな・・・。
原作本の出版を、知り合いの出版社をあたってみるって・・・
「あ、はいっ!伺ってます!失礼ですがお名前を頂いても・・・・」

「講談社の■■と申します。」
「わかりました、講談社の■■さんで・・・・す・・・・ね?え?」
え・・・?
え?
こ・・・・こ・・・ここ・・・・


まままっまままままっまいでぃーさんっ!!!??
おきゃ・・・おきゃっ・・・・お客様ですっ!!

マイディーさんに突然の訪問者!ぴぃさんの紹介でやってきた訪問者は・・・
誰もが知っている超大手の出版社だった・・・。
再び動き出す、【光のお父さん】書籍化の話・・・!!
「僕!コミックボンボン派ですっ!!プラモスピリッツ!!」

いきなりの大手出版社登場に、またもやマイディーさんは舞い上がり大混乱。
「でもね・・・マイディーさん・・・これでは駄目なんですよ・・・。」
そして・・・マイディーさんは【光のお父さん】書籍化への大きな弱点を指摘されるのでした。
次回、光のぴぃさん第10話
「それはちょっと無理かも…と思ったけど やるしかなかった。」
おたのしみに。
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