
僕の父はずっと営業畑で生きてきた。
なので人の発する言葉や文章に込められた いろんな「意味」を汲み取るのが得意である。
映画のワンシーンをとっても、このシーンのこの台詞はあのシーンのあそこと引っ掛けてあるから、こういう意味なんだと子供の頃から僕に自慢げに話してくれていた・・・。
夕食を終えた父が、今とても嬉しそうにニコニコとしながら ひとつの「企画書」に目を通している。
そこに書いてある文章のひとつひとつを余すところなく読んでいるのがわかる・・・。

僕は答えを待てなかった・・・。
だから僕はまだ企画書を読み終わっていない父に聞いてしまった。
「・・・・・どうかな?」
そうすると父はニコニコしながら答えてくれた。
「営業にとって企画書とか提案書は武器やからな・・・でも・・・

そうか・・・よかった・・・。
父はまだ嬉しそうな顔をして企画書の表紙を眺めている。
「企画書としてもよーできてるわ・・・」
「実現できるかはわからんけどな・・・・w」
「それでも・・・・や。」
父はなかなか企画書を返してくれない・・・。
でも・・・
その気持ち・・・わかる。
父がみんなと一緒に続けてきた旅が、いまひとつのドラマになろうとしている。
・・・・この「企画書」への思い入れも深いのだろう・・・。
「それは記念に一部あげるよ。」
父はまだニコニコと笑っていた。

人は 「夢」 をみる。
希望・・・ 憧れ・・・
こうなれたらいいな・・・・ こうだったら幸せなのにと・・・・ 人は様々な「夢」を想い描く。
そして その「夢」が「目標」に変わったとき・・・
新しい冒険が始まるのかもしれない・・・・。
この物語は・・・・
「ゲームプレイブログのTVドラマ化」
という、 前人未踏の夢に【挑戦】する・・・
ひとりのゲームブロガーと、
ひとりのプロデューサーの物語である。

ツインタニアを目指して ぴぃさんの旅は続いている。
ぴぃさんは、より広くこの世界を知るために、クラフターを始めてみたり、金策を始めたりしはじめてくれました。個人的にとても楽しんでいらっしゃるご様子です。
そしていつものようにIDを攻略しながら、「光のドラマ化計画」の打ち合わせを行う事になりました。

「で、出資営業のほうはどうですか?」
「実はもう何社か当たってみたんです。」
「ど・・・どんな感じですか?感触・・・・。」

「みんな食い付きはいいですね~。」
「おおっ!!みなさん制作委員会には参加してくれそうですか?」
「う~ん、まだそこまで具体的に話は進めていません。まだ企画書ができていないですからねw 参考までに話を聞いている程度です。」
「なるほどです。」

「でも・・・・みんな言いますね・・・。」
「?」
「たしかにネタは面白いけど・・・本当に これ作れるの?と・・・」
「当然そこ・・・気になりますよね・・・。」
「作れるかどうか・・・・ですか」
「はい・・・通常のドラマには無い部分がありますからね・・・」

「物語の構造の問題ですよね。」
「そうなんですよ。」
「どういう事でしょうか?」

【光のお父さん】の物語の構造は3つのパートで成り立っています。

① 「回想パート」
冒頭にある回想パートは、マイディーさん自身が子供の頃のお父さんとの思い出を綴っているパートですね。
この部分がその物語の鍵や気付きに直結する重要なパートです。

② 「リアルパート」
リアルパートは、実際にお父さんとカレーを食べながら会話する食卓のシーンですね。
ここも重要なパートで物語が大きく進むシーンでもあり、お父さんのキャラクターの本音が出るきわめて重要なパートです。

③ 「エオルゼアパート」
そして、お父さんとマイディーさんが冒険をするエオルゼアパートですね。
ブログ上の物語として中心になるパートです。

【光のお父さん】は、この3つのパートが絡み合って1本のストーリーになっています。
【光のお父さん】を映像化する場合、この物語の醍醐味でもある3つのパートの「絡み」や「影響」を盛り込まなければ【光のお父さん】のドラマ化とは言えないでしょう。

①の回想パート、②のリアルパートに関しては、通常のドラマと変わりません・・・。通常のドラマ作りと同じように、子役や俳優を起用して演技をすれば制作できます。
しかし問題なのは、 ③の「エオルゼアパート」です。

多種多様な種族や、架空の装束を身にまとった登場人物。

迫力のある造形のモンスターたち。

そして幻想的な美しい世界・・・
これらをどう映像化するか・・・
実はこのエオルゼアの実写化こそが、このドラマを作るにあたっての・・・
引いてはこの企画自体の一番の難題かもしれません・・・・。

「こう・・・なんというか・・・
その部分は、なんとかレンジャーみたいな感じで・・・」
「特撮?」
「そう!それですっ!その特撮で作れないのですか?」

たしかに一番最初にそれを思いつきますね。
ミコッテやララフェルは俳優さんに特殊メイクを使い、モンスターは着ぐるみを使用。
風景はセットを組み、エフェクトや爆発などはCG合成を使用すればエオルゼアは再現できるかもしれません。

しかし、今の時代の目の肥えた視聴者が納得いくレベルの特撮ドラマを作ろうと思った場合、1話数千万はかかるでしょう。
また、そこに予算が取られすぎると、今度は俳優さんたちへのギャラを絞っていかなければならなくなり、実力のある俳優さんは起用できず、まだ演技力が未熟な若手俳優を使うことになったります。
子供向けの特撮番組であれば、お芝居のレベルが低くても戦闘シーンさえ派手であればいいのかもしれませんが、今回のドラマはそうはいきませんからね。演技力の高い役者さんを起用する必要があります。
それに深夜ドラマなので予算にも限りがありますからね・・・。
それでも予算を絞って絞って無理やり特撮で作ったとしても・・・

「作ったとしても?」

背景は写真、モンスターはミニチュア・・・
そしてキャラクターはアニメの止め絵を合成なら・・・なんとか・・・・
「それじゃまるでアイゼンボーグじゃないですかっ!!」
「ダイバスター方式といいますか・・・」
「もっと悲しかった!」
「なんだかわかりませんが、残念な感じだということはわかります。」

この後もいくつか案がでたけど・・・。
どれもこれも莫大な予算がかかるものばかり・・・。
フルCGにするには、モーションを取ったりモデルを作ったりととてつもない時間と莫大な予算がかかってしまう。
ぴぃさんが声をかけたのはもちろんドラマを作るプロの人たちです・・・
その人たちが「ほんとに作れるの?」と聞くくらいです・・・。
私達の考えではどうしようもない事なのかも知れない・・・そう思いました。

「ぴぃさんはこの企画を考えた時、エオルゼアシーンはどうしようと思ったのですか?」
「私は・・・

【エオルゼアパートを丸々カット】で考えていました。
どう考えても それが一番現実的なんです。
俳優さんがゲームをプレイしているシーンで繋げていくパターンです。
言わばエオルゼアの外側の話で再構成しようと考えていました。」

「確かにそれが一番現実的なんでしょうね・・・・。」
「予算を多めに組み、演技力の高い俳優さんを起用しようと思ってました。エオルゼアシーンが無い代わりに高い演技力で親子の物語を構築していく・・・。」

「・・・・・・。」

「ですが・・・」
「?」

「皆さんと一緒に旅をさせていただいて・・・この世界を知っていくうちに・・・
その構成では父と子のドラマは作れても、【光のお父さん】にはならない・・・そう思うようになったんです。」
「ぴぃさん・・・・。」
「お父さんが、エオルゼアの旅を続けられた気持ちもよくわかります・・・。それだけの魅力がありますよ、この世界には・・・」

「今は、この美しい世界をなんとか映像にしてみたい・・・そう思ってます。」
「なんとか低予算で、この世界を再現できる方法を思いつかないとですね・・・」

「きっとなんとかなりますよっ!」
私は少し嬉しかった。ドラマを作るという目的でエオルゼアにやってきたぴぃさんが・・・
私達と旅を続けることでエオルゼアを好きになってくれた事が嬉しかったんだと思う。

「すごい!夕日がきれいですよっ!あるさんっ!」
私達はもう当たり前に見えてしまってる風景も、ぴぃさんにとってはとても新鮮なんでしょうね・・・

「ほんと・・・綺麗ですね・・・
まるで・・・・

映画のワンシーンみたいです・・・w」
あ・・・・

「あっ!!」

「ああっ!!!」

「あああああああああーーーっ!!!」

「あった・・・・!!」
「ありましたねっ!!予算をほとんどかけずに・・・・」
「100%エオルゼアを再現する方法っ!!」
「すごい・・・画期的だ・・・!」

「い・・・・いけそうですか・・・!?」
「はいっ・・・!!表情や指の可動、エモート・・・・
どれも視聴に耐えられるレベルですっ!」
「そうか・・・その方法がっ!」

「はい! エオルゼアパートは・・・

これなら予算はほぼ ゼロ!・・・そして100%の再現率!
動画をキャプチャーするカメラマン、そして監督もここに呼び・・・
エオルゼアパートは全て・・・エオルゼアで撮影するっ!!

キャラクターの多彩なエモートや、リップシンクを使って・・・お芝居をするんですねっ!!

マイディーの役をゴマキに頼むことも無い・・・・
マイディー役は・・・自分自身でやればいいのかっ!!

え!?ちょっちょ・・・ちょっとっ!!
ほ・・・本人が出演するんですかっ!?
それって・・・実際にテレビに出るんですよねっ??
ドラマに出るんですよね??
つ・・・つまり・・・

「はははっww
皆さん世界初の【アバター芸能人】になりますねw」

「え?な…!ままっま…マイディーさん!?」

「あるちゃん!そういうことだから、
至急【レモンを持って微笑む】練習しないと!!」
「れ・・・れもんっ!?」
「レモンww」

私たちの思いつきはその後徹底的に練られ・・・・
エオルゼアパートは実際にゲーム内で撮影することに決定。
光のお父さん計画の当事者である私達じょびネッツアがお芝居を行い・・・
そこに声優さんの声を入れてドラマを作る方式が採用される事になったのです。

ぴぃさんはブレイフロクスが終わるとすぐさまログアウトして・・・・
TVドラマ【光のお父さん】の企画書を完成。
後日、私達に見せてくれました・・・・



※実際に作られた企画書の一部
こうして・・・無理だと諦めかけていた「エオルゼアパート」の問題は解決し企画書も完成。
ぴぃさんは、出資営業を本格的に開始した。

子役さんを使った「回想パート」、俳優さんを使った「リアルパート」、そしてエオルゼアで私達が演じる「エオルゼアパート」。
TVドラマ【光のお父さん】は、この3つのパートを行き来しながら 親子の物語、オンラインゲームの素晴らしさを伝えるドラマとして製作していく方向性で進めることになった。
そしてその企画書には、たくさんの夢が詰まっていた。
まだ誰も見たことのない・・・オンラインゲーム史上初のTVドラマ・・・
そう・・それは今までに無い まったく新しい形になった。

最高の企画書が完成し、私たちはエモートを使った演技の練習に入る。
しかし・・・最高のプランに見えた「エオルゼアパート」に・・・
出資者達が理解を示してくれない・・・。
そこで私達は出資者達の理解を得るために・・・
ある作戦を実行する。
そして・・その重要な作戦を成功させる為に立ち上がったのは・・・・・

「それは、私がやりますよ。」
次回、光のぴぃさん 第9話
「それはこの世界の可能性を広げる為の戦いだった。」
おたのしみに。
つづく。
- 関連記事
-
- 光のぴぃさん第9話 「それはこの世界の可能性を広げる為の戦いだった。」 (2016/10/24)
- 光のぴぃさん関連の事 その3 (2016/10/21)
- 光のぴぃさん第8話 「それは今までに無い まったく新しい形になった。」 (2016/10/10)
- 光のぴぃさん第7話 「それは途方も無い戦いの幕開けでしかなかった。」 (2016/09/26)
- 光のぴぃさん関連の事 その2 (2016/09/16)