
その日私は、朝から同じ曲を繰り返し聴いていました・・・。
「時には昔の話をfeat.COLDFEEET」・・・・。
音楽で緊張を抑えつつ色々な事を考えながら、私は商談の場所へ向かいました。
私はいつも正念場になる商談をする場合は、想定できる限りの展開を考えます。
自分が話す内容を整理して 最悪の事態 を想定し商談へ向かうようにしています。
最悪の事態とは・・・その日でこのドラマ化企画が無くなる事です。

でも今回ばかりは考えれば考えるほど、SQEXがドラマ化を私に任せる理由が浮かびません。
理詰めで説明すればするほど「詰む」気がしてならない。
だから・・・馬鹿みたいに・・・自分の気持ちだけを素直に伝えよう・・・
最終的に それしかない。そう思ったんです。

SQEX本社に入り、担当の方にお会いして・・・説明を始めいくつかのやり取りを終えた後・・・
最初にメールで送った資料をしっかりと呼んでくれている手応えを感じました。
だから私は・・・簡単に内容を伝え・・・馬鹿みたいに言ったんです。
「どうしてもドラマ化をしたいのです!
私に任せてくれませんか?どうしてもやりたんです!!」
返ってきたのは、思いもよらない一言でした・・・。

「はい、それで結構です。進めてください。」
一瞬、何を言っているのか理解出来ずにもう一度手短に同じ内容を説明をして、自分に任せてほしいと言ったら、明るく元気な声で同じ答えがもう一度返ってきました。
その後、具体的な説明をしながら、少しずつわかってきました・・・・
おそらくアポの段階で 吉田P/D がOKを出している・・・
そんな感じがしました。
彼らは、すでに事前に 協議し 結論を出してくれていたワケです。
即決・・・・。そんな事は今まで一度も経験した事がありませんでしたよ・・・。

私はその日、朝から同じ曲を繰り返し聴いていました。
SQEXを後にして、また聴き始めた時、朝聴いていた曲とまったく同じ曲。
でも・・朝の曲とはまったく違う曲に聴こえたし・・・・それになんだか・・・・
涙がこぼれてしまいましたよ・・・。
ぴぃさんは優しく笑いながら・・・あの日 新宿で何が起こったのかを・・・
私たちにゆっくりと聞かせてくださいました・・・。
人は 「夢」 をみる。
希望・・・ 憧れ・・・
こうなれたらいいな・・・・ こうだったら幸せなのにと・・・・ 人は様々な「夢」を想い描く。
そして その「夢」が「目標」に変わったとき・・・
新しい冒険が始まるのかもしれない・・・・。
この物語は・・・・
「ゲームプレイブログのTVドラマ化」
という、 前人未踏の夢に【挑戦】する・・・
ひとりのゲームブロガーと、
ひとりのプロデューサーの物語である。

「これで ドラマ化決定 ですねっ!すごく楽しみですねマイディーさんっ!うわぁ・・・PLLで発表とかされるかなっ!?」
「う・・・うん・・・そうだね。」
「・・・・・・・。」

「あれ・・・・? ぴぃさん!これでドラマ化決定ですよね?」

「いえ・・・。」
「!」
「まだ決定ではありません。
SQEXは推進を承認したにすぎません。
今の所…ドラマ化できる確率は10%程でしょう。」

「10%!?」
「・・・・・・。」

「いや、大きな一歩ではありますよ!
でも・・・これは言わばSQEXからの【挑戦状】みたいなものだと私は思っています。」
「挑戦状・・・・?」

「では今日はこれで!・・・
ちょっと色々資料を作らないといけませんので・・・」
「あ!おつかれさまですっ!!」
「お疲れ様です!ありがとうございました!」
そう言ってぴぃさんは、せわしなくログアウトしていきました。
思いもよらない嬉しい出来事にもっと大はしゃぎするかと思ったのに・・・

なんだろう・・・この空気・・・。
最初にして最大の壁を越えたはずなのに・・・
なんで二人とも嬉しそうじゃないんだろう・・・・・。

「さて・・・ちょっと部屋で離席するね・・・」

「マイディーさんっ!」
「?」

「マイディーさんは・・その・・嬉しくないんですか?
ほんとにドラマ化できるかもなんですよ?」

「嬉しいよ・・・。自分がずっとやって来た事を認めてもらえたんだ。
そりゃ人生でもトップクラスに嬉しいよ?」
「でも・・・なんか・・・」
「ああ・・・w」

「あるちゃん・・・僕はまだ・・・
【光のお父さん】の最終回を書いてない・・・。」
「あ・・・・。」

「本気で嬉しいから・・・承認をくれたSQEXや、商談をまとめてくれたぴぃさんの為にも・・・期待して待ってくれてる読者さんの為にも・・・本気でそれに答えたいと今まで以上に思った。
でもそうする為には、僕は今までやってきた事の全てを注ぎ込んで 自分に出来る最高の最終回を書き上げないといけない・・・。」
「・・・・・・。」
「ものすごいプレッシャーはある。」

「マイディーさん・・・・。」
「光のお父さん計画は完遂し親孝行はできた・・・。あとは応援してくれた人達の気持ちに答える義務が・・・僕にはあるからね・・・
ちょっとがんばるよ・・・。僕は僕のやれる事をやらないとね。」

その日からマイディーさんは日課だったエキルレも回さず・・・ログインしては自分の部屋にこもるようになった。
今から自分が書く物語が・・・ブログだけではなく・・・連続TVドラマの最終回にもなる・・・。
話が大きくなればなるほど、背負うプレッシャーも大きくなる・・・。
私はこの時ぴぃさんが使った「挑戦状」という言葉の意味が・・・・なんとなくわかった。

それから数日後、ぴぃさんのツインタニアに向けてのメインストーリー進行もひと段落が着いたので・・・
「光のドラマ化計画」の今後について話し合うことになりました。

「では、今から我々がドラマ化に向け、
これから どういう風な流れで動いていくのかを説明しますね。」

まず今回、「原作者の承認」と、「FFXIVの使用承諾」が取れました。
ここから ふたつの「サイド」 に分かれ ドラマ化を目指します。

まずひとつ目が・・・「ビジネスサイド」です。
ビジネスサイドは主に出資条件の調整や事業計画を練ります。
そして、その計画にそった「製作委員会」を編成します。

「あ・・・よくアニメとかでみる、○○製作委員会 みたいなやつですね?」
「よくオープニングクレジットの最後に出てきたりしますよね。」
「よく見るんですが・・・あれって何なんですか?」

「わかりました、では あくまで簡単に 【製作委員会方式】 について説明しますね。」

本来「出資」というのは事業者に資金を提供し事業を進めさせ、その成果に応じて報酬を貰う・・・という形が一般的ですよね。
RPG風に例えると、勇者と村人の関係・・・と言う所でしょうか。
村人は色々と勇者の世話をしてくれますが、実際に一緒に戦ったりはしない。
あくまで支援・応援という形です。
たくさんの人からの応援や支援を受ければ、勇者はそれを力に変えて魔王を討つ事ができ、名声を手に入れます。
そして村人達は勇者が魔王を倒す事で「平和」という報酬を得る。
これが出資者と事業者の関係ですね。

一方、【製作委員会】という方式は言わば「パーティ」です。
製作委員会方式も、様々な会社が手を組み、資金を集めて作品を作り、成果を分配するという部分では通常の出資とあまり変わりません・・・ただ・・・
通常の出資と大きく違う点があります。それは・・・

FFXIVのパーティと同じように・・・
各々の出資会社に「ロール(役割)」があるという部分です。
例えば「あるちゃんの大冒険」という映画を作る場合・・・
「タイトル・・・・」

このように出資会社が各々のロールを自ら担当し
作品のバリューアップに努めるわけです。
そして全員で力を合わせ、責任を持って各ロール遂行に尽力し、最大限の収入が得られるよう共に戦う。
それが製作委員会方式です。
つまり・・・光のお父さん製作委員会に集まってくる会社は・・・
我々の頼もしい仲間になるわけですね。

「仲間・・・・・!」
「はい。かなり簡単に説明しましたが、出資だけでなく一緒にドラマを作っていく仲間。そういうイメージを持ってもらえればOKです。」
「なるほど・・・。」

「なので私はこれから旅に出ます。仲間を探す旅ですね。」
「!」
「この戦いに勝つためには・・・強い仲間を集めなければなりません。」
「つまり・・・制作会社や、TV局に企画を持っていく・・・という事ですね。」
「そうですねw」

「それはぴぃさんにしか、できないですからね・・・・よろしくお願いします。」
「放送するTV局、制作会社、キャスティング会社・・・そして今回は ネット配信 もやろうと考えていますので ネット配信業者・・・、すでに何社か目星をつけてます。」
「ネット配信!」
「今の時代はそれも外せませんからね。」

「そしてもうひとつのサイド・・・
それがクリエイティブサイドです。」
「!」

こちらは主に物語の流れを綴った「シノプシス」や「脚本」の開発を行います。
脚本が無いと、実際にどんな役になるのか解らないので俳優のキャスティング、スタッフィングができません。
脚本を見て出資を決める企業もあるでしょう・・・。
ですのでまずは脚本開発をしなければならないんですが・・・
問題がひとつあります・・・。

それは・・・【光のお父さん】の連載がまだ「最終回」を迎えていないことです。
これから監督や、脚本家を見つけたとしても、
原作の結末をしっかり理解していないと良い脚本はできません。
ですので・・・
マイディーさんは【光のお父さん】の「最終回」をしっかりと完成させてください・・・。

「プレッシャーも大きいかと思いますが・・・
それはマイディーさんにしかできませんからね、お願いします。」
「つまり、それが完成しないと・・・・クリエイティブサイドは動き始めないんですね・・・」
「そういう事です・・・。できそうですか・・・?」
あ・・・・

マ・・・マイディーさん・・・・。
だ・・・大丈夫なのかな・・・・あれからすごい悩んでたのに・・・・。
マイディーさんのブログでは・・・【光のお父さん】の最終回にはまだ何も触れてない・・・。

マイディーさん・・・・。
「ぴぃさん・・・それなんですが・・・・・」
「はい・・・・」

「実は僕・・・子供の頃からずーっと言ってみたい台詞があったんですよ。」
「!?」
「あの・・・言ってみていいですかっ・・・」
「ど・・・どうぞ・・・」
「では・・・お言葉に甘えて・・・コホン・・・では…いきます…」

「!!!」

「日々のブログ更新の裏で、密かにダミーブログを立ち上げ、
すでに30話及び最終回のプロットの開発は完了させてあります!!
関係者には公開してもかまいません、使ってください。」
「おおお・・・・。」

マイディーさんは、あれから自室に篭り・・・
エキルレも回さずにこれを作っていたんだ・・・・・
「光のお父さん30話及び最終回について・・・」そうタイトルが付けられたダミーブログの記事には・・・
光のお父さんのツインタニアとの死闘の流れとその表現方法や盛り込むテーマ・・・
そして最終回の結末に向けての演出や台詞・・・それらが事細かに書かれていた・・・
【光のお父さん】・・・・ こ・・・ こんな最終回になるんだ・・・?

「これはありがたい…これがあればすぐに動けますっ!
製作委員会の編成と、シノプシス・脚本開発を
始めましょう!」
「宇宙戦艦ヤマトの真田さんのキメ台詞が言いたいが為にがんばりました!」
「マイディーさん・・・せっかく感動したのに・・・
頑張った動機・・・そこですか・・・」

「僕はこのプロットにもう少し肉付けしてブラッシュアップします!」
「私は、昔なじみの制作会社から当たってみますっ!!」

私はこの日の二人のやり取りを見て・・・思った。
SQEXのドラマ化承認は「挑戦状」・・・
【光のお父さん】のドラマ化を進めるのはかまわない・・・でも・・・
ほんとにできますか?・・・・という私たちへの挑戦状。

お金を入れてボタンを押せば 勝手にドラマが出来上がるわけではない…。
SQEXの承認を取ったからといってドラマが完成するわけではない…。
放送するTV局との交渉、ネット配信業者の確保、キャスティング会社との契約、制作会社選定、パッケージ会社契約、音楽の製作、監督への以来、俳優の選出と手配・・・さらに脚本の製作・・・などなど

そうだ・・・そうなんだ・・・
私たちはこれからこの無限とも思える無数のハードルを・・・ひとつひとつ越えていかなければならない。
私たち自身が・・・・越えていかないと駄目なんだ・・・・。

そう・・・
それは途方も無い戦いの幕開けでしかなかった。

ぴぃさんは製作委員会編成の営業を開始する為の武器「企画書」の製作に入る。
しかし、私たちの前に またしても立ちふさがる大きな壁。
予算を莫大に消費するであろうゲームシーンにおける
・・・・エオルゼアの再現。
ミコッテやララフェルという種族、そして美しい背景・・・それをいかに高いクオリティで完成させるのか?

「それじゃまるで アイゼンボーグ じゃないですかっ!!」
そしてたどり着く・・・・思いもしなかった形!
次回、光のぴぃさん 第8話
「それは今までに無い まったく新しい形になった。」
おたのしみに。
つづく。
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