
子供のころに読んでトラウマになった本がある。
その本の名前は「ねむれなくなる本」という児童書。
子供のころ何気に本屋さんでその本を見て、興味本位で母にねだってみたら買ってもらえた。
きっとこれは怖い話に違いない!これを読んだら怖くて怖くて夜もねむれないんだっ!おおおっ!とか思ってたと思う。
そして家に帰って読んでみた・・・・。
怖かった・・・本当に怖かった・・・・。っていうか怖くて泣いた。
何が怖かったかというと・・・子供なので怖い話=おばけの話って思うじゃないですか・・・。
「ねむれなくなる本」はオムニバス形式の短編集で、どんな話が収録されているかというと・・・
・少女が勢い余って酔った母を突き飛ばして殺してしまったという内容を父に向けて手紙にする話・・・。
・母と娘が姑をいじめ殺す話。
・少年が不良に復讐する話。などなど・・・
全てが淡々と書かれており、それが変にリアルに感じて小学生だった僕は、「なぜこんな事になったのか」「どうすれば良かったのか」を延々と考えてしまい眠れなくなった。
なぜこんなどう考えても子供に人間の汚さや怖さを伝え、人を落ち込ませるような話の短編集が「児童書」というカテゴリなのか・・・。
僕は大人になり、「ひとりぼっち惑星」というゲームを通じて、それがわかった気がします。

最近、ツイッター等でも話題沸騰の「ひとりぼっち惑星」。
この文章が泣けた。とか切ない。なんていうツイートを目にした人も多いと思います。
「ひとりぼっち惑星」はひらがなで書いた文章を誰かから受け取ったり、送信したりするゲーム(?)だ。
わかりやすくいうと、瓶に手紙を詰めて海に流す宇宙のボトルメールみたいなのを楽しむアプリ。

このゲームにチュートリアルは無い。何をどうすればいいかはわからない。
それをここに書くこともできるけど、なんだかそれをするのは無粋な行為のように感じるので書かない。
手探りで見つける発見をこれから始める人にも楽しんでほしいなと思います。

ミサイルの軌道は美しく、部品のデザインも秀逸。そして流れる音楽はこの世界観をさらに深いものにしている。
言葉では何も語られないので、画面に映る何かを発見した時、ほのかな喜びを感じる。
その発見はなぜそれがそこにあるのかの「夢想」につながり自分なりの答えが構築されていく。
ひとりぼっちなんだから、そうやって世界を自分勝手に補完していくのかもしれない。
それがなんだか夢を見ているような心地よさを感じさせてくれる。

絶望しかないこの惑星にひとりぼっちだけど、あまり寂しさは感じない。
それは宇宙から届く「だれかのことば」があるからだろう。
それは誰かの今の報告であったり、悩みであったり、懺悔であったり。
苦しみであったり、喜びであったり、幸せであったり、不幸であったり。

これは、誰かがどこかで生きていているからこそ、紡がれることばであり、誰に当てたわけでもない生のことば。
そういったことばをじゅしんする事で、ひとりぼっちではないと感じるのかもしれない。
あまりにも悲しく切なくはかない言葉。
でも、これらを受け取るたびに感じる新しい悲しみ。



返事はできない。こちらからことばをそうしんできるけど、それがこのことばをくれた人に届く可能性は限りなく低い。
悩みを解決するすべを伝えられない悲しみ。
心配事に対して「大丈夫だよ」と言ってあげられない悲しみ。
嬉しい報告に「良かったね!」と伝えら得ない悲しみ。

ことばを受け取った僕たちに許されるのは「夢想」するだけ。
どんな人がこの文章を書いたのか、なぜそうなったのか、どうすれば良いのか。
それらを夢想することしか許されない。
僕が子供のころに「ねむれなくなる本」を読んだときと同じ気持ち。
でも大人になった今、あの頃と同じような気持ちになって気づいた事がある。

それは、自分は今受けたことばに、答えることができる恵まれた環境にいるということ。
「ねむれなくなる本」に登場する人物に、誰に届くともわからないことばを発する人たちにはことばを返してあげられないけど、
今目の前にいる人たちにはことばを返す事ができる。
誰かが目の前で悲しんでいたら慰めてあげることができるし、怒っていたら話を聞くことができる。
喜んでいたら一緒に喜んで喜びを共有できるし、好きな人には好きと言える。
その当たり前に隠れた幸せに気づくことができた。
「ひとりぼっち惑星」も「ねむれなくなる本」もそういう事を僕に教えてくれた。
このゲームは悲しいね。この本は切ないね。あの映画は楽しいね。
そうだね、じゃあそれを感じて、君は今日からどうするの?
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