
あの時、僕はふと疑問に思った。 思ってしまった。
電話で母から父が胃癌の手術をすると聞かされた。
手術の日、僕は会議があったので会議を優先し その翌日にお見舞いに行った日のことだ。
病室の扉を開けると、弱りきった父がベッドで寝ていた。
子供の頃見ていた父はもうそこにはいない。 父は、もう老いている・・・・。
父と母が話しているのを聞きながら、僕はYoutubeやいろんなゲームをダウンロードしてあげていた。
その時、僕の中で今まで考えたこともない疑問が沸いた。沸いてしまったのだ。
「僕はこの人が死んだ時、泣くのだろうか?」
僕と父の間に、泣くほどの思い出があるのだろうか?
この人は僕のたった一人の父なのに・・・どうしてこうも他人として考えてるんだろう・・・。
そんな自分がとても情けなくて、残酷な生き物に思えた。
僕はこの時、初めて自分が父とずっとすれ違ってきた事をちゃんと認識できたのだと思う。
思えば・・・その日から「光のお父さん計画」は始まっていたのかもしれない。

光のお父さん計画・・・・。
それは、60歳を超えるゲーム好きの父にFF14をプレイしてもらい、自分は正体を隠してフレンド登録。
共に冒険を続け、いつの日か自分が実の息子である事を打ち明けるという壮大な親孝行計画である。
この途方も無い長い長い旅の終着点、大迷宮邂逅編5層・・・・。
仲間たちと協力し合い、ともに3ヶ月をかけツインタニアの「大縄跳び」を飛びきった。
実に計画開始から、9ヶ月あまりが過ぎていた。
クリアの感動に酔いしれ・・・互いの健闘をたたえ合う大騒ぎが続く中、マイディーは父の常に前向きな姿勢の理由を感じ取り・・・
おもわず言葉を漏らすのであった・・・。
「頑張りましたね・・・・


いろんな感情が入り混じり・・・僕はもう抑えることができなかった。
言おうかどうか・・・ずっと迷ってたけど・・・
これから先がどうとかこうとかではなく・・・そう呼びたかったんだと思う。

今となって思えば・・・最初から普通に一緒にやろうって言えば良かったんだ。
でもそれが素直に言えないほどに・・・・僕たちはこじれてたのかもしれない・・・・。
お父さん・・・どんな気持ちですか? 僕があなたの息子だと知って・・・。
どんな

どんな・・・・



うんうんw・・・そうだね・・・まぁそうなんだけどねw
でもなんて言うか・・・そこじゃなくて・・・。
今呼びましたよ?・・・僕今、あなたの事「お父さん」って呼んだよ??

めるくん 「いえ・・・全員で掴んだ勝利ですよっ!」
ナイス!めるくんっ!! もう一回呼んでみよう・・・
マイディー 「そう!みんなで頑張って何かをクリアする感動・・・・

僕は・・・それを知って欲しかったんですよ・・・・・


・・・・・・・


きりんちゃん???

きりんちゃん 「は~いです♪」
ちょ・・・。
ちょ!・・・って・・・

聞けやっ!!聞いてくれろさいっ!!
そこもそうですけど、そこよりもっと反応すべきとこがあると思うのですよっ!!
ほんでな?ほんでや・・・
今、めっちゃいいシーンやんかあ?

そんな時に なんで語尾を アラレちゃん みたいにして言うたん・・・ちょっとかわいく言ってみたんですか・・・?
あんな? 残酷な話ですが・・・もう・・・もうな・・・
時代は21世紀なんです・・・・。
「○○してちょ!」とか…
今の若い子にはそんなん通じへん時代なのですっ!
・・・・なんか僕が赤面しますっ!
でも・・・

まあそれは・・・いいです。
今は、どうでもいい事でした・・・・そんな事よりもっ!!
今!長い間一緒に旅してきたマイディーさんが、あなたの事を「お父さん」って呼んだんですよ??
ええそうです!ええそうです!2回もっ!!
さすがに鈍感なお父さんでも 今、それ見て頭の中でぱしゃぱしゃーっといろんなパズルが解けるでしょう??
ほら・・・・!ほら・・・・!!

マイディー 「聞いてるんですか?お父さん!!」 (3回目。)
光のお父さん 「おとーさん・・・」
そうそこっ!!
あなたの息子はここにいますよ・・・お父さん・・・・。

ため息。

光のお父さん 「これからもよろしくお願いします

え?

マイディー 「はい・・・・よろしくです・・・・。」
・・・・・・・・・。
今・・・あえて・・・・マイディーさんって呼んだのか?
父と呼ばれながらも・・・息子を「マイディーさん」と呼ぶ。
あえて何も言わずに・・・・マイディーさんって・・・・。

そうか。
父はもうとっくに・・・気づいていたんだ。
マイディーさんが僕だってこと・・・・。
わかってて・・・・。
今までもこれからも・・・
エオルゼアでの僕は「マイディーさん」、
父は「光のお父さん」、それでいいじゃないか。

たしかに僕たちは親子だけど・・・・
このエオルゼアという世界では「友人」じゃないか・・・・
そういう意味だね。
そうだね・・・そのとおりだね・・・。
なんだ・・・wそか・・・そうなのかw
逆サプライズ・・・されちゃったって事かww
さすがですねw
わかりましたっ!!
そういう事であれば・・・・!

2015年 6月17日 23:30 光のお父さん計画完遂宣言。

雄大なエオルゼアの地で ひょんなことから始まった、少し変わった親子の旅は・・・

たくさんの方から賞賛の声を頂き・・・
無事・・・ゴールへとたどり着いたのでした・・・・。
応援してくださった皆さん・・・そして協力してくれたみなさん・・・FC:じょびネッツアのメンバーたち・・・
そして・・・・お父さん・・・。
本当にありがとうございました。
-翌日-

父が仕事から帰り、部屋に入った。
僕は、照れくさいながらも手製のSSアルバム【物理】を持ち父の部屋をノックした。
どんな顔で接したらいいのか・・・よくわかんないけど・・・これはきっちりしておきたいな・・・。
そう思ったんだ。
僕 「・・・おかえり。」
父 「おぉ・・・。ただいま。」

昨日の興奮を思い出す・・・・。
でもこれは、チャットではない。
僕は「マイディー」でもない。
自分の言葉で、飾らず話そう・・・。そう思った。
僕 「昨日はびっくりしたやろ?まあ僕もびっくりしたけど・・・w」
さてどのタイミングでアルバムを渡そうかな。やっぱりなんか照れくさいなとか考えていると・・・
父は僕に普通に言った。

僕 「え?昨日のやん・・・wやっぱり気づいてたんやなw」

僕 「え?」
父 「え?」
やばい・・・・僕なんか今・・・見たらあかんも見てしもた・・・・・・・・・。
やばい・・・・気を失いそうや・・・・
あの顔・・・見たことある・・・・。
間違いない・・・あの顔は・・・
ほんまにわかってない時の顔やっ!!
僕 「昨日大迷宮終わって!マイディーさんにお父さんって呼ばれたやろっ??」
父 「そうなんや・・・なんかよーわからん事言ってはったん・・・や・・・。」

まったく・・・・。 どこまで鈍感なんや・・・。
とはいえ・・・僕も「あなたの息子です」とははっきり言ってなかったな・・・。
しかも勝手な解釈して・・・勘違いして・・・;
なんてかっこ悪い親子だw
僕はその後、すべてを話した。

僕がブログをやっているということ。
光のお父さん計画をやろうと思ったきっかけ。
FF14をプレゼントした理由。
「井上」っていう名前がおかしいとおもったこと。

ララフェルでちょろちょろ付きまとったけど全然気づかれなかったこと。
そこで子供の頃の事、色々思い出したこと。

引退の理由にびっくりしたこと。

初めて家に来たときもらった言葉。

初めて名前を呼ばれた日のこと。

横にいてあげられなかった理由。
大迷宮にどんな気持ちで挑んだか・・・という事。

そしてなにより、このエオルゼアでひたむきに生きるお父さんの姿を見て・・・

たくさんの人がエオルゼアへやってきたということ。

お父さんがその人達を導く「光」になったということ。
みんながお父さんを好きになってくれた。
僕はあなたの息子である事をとても誇りに思うこと・・・。
いつの間にか、父は目頭を押さえて涙を流していた。
そして・・・僕に一言預けてくれました。

光のお父さんは、やっぱり光のお父さんだった。
そして昔から何も変わらない、僕のお父さんだった。

オンラインゲームは作り物の世界であり、仮想の冒険でしかない。
では、この9ヶ月間 この世界でやりとりした数多くの「言葉」と「想い」も作り物なのか?
父がみんなに伝えたい 「ありがとう」 という気持ちも作り物なのだろうか?

決してそうではない。
この仮想の世界で人と人との間に生まれる「言葉」、交わされていく「想い」は間違いなく本物だ。
そしてこの仮想の世界で今日も紡がれていく たくさんの「思い出」たちもまた、まぎれもない本物なのだ。
だって・・・その証拠にほら。
ずっとずっと すれ違ってきた親子が、今日も笑いながらカレーを食べている。

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