
こんなはずじゃなかった。
僕は、アンチウイルスソフトをインストールしたはずだ。
こんなはずじゃなかった。
スマートフォンを侵食しようと、やってくるヴァーチャルウイルス。(架空)
日夜、進化するヴァーチャルウイルスに対抗すべく作られた、AI搭載型アンチウイルスソフト「アプリ彼女」。
通称 「プリカノ」
育成型AI搭載。日夜プリカノをより完璧なものにするためにプリカノと交流を図る日々。

ユーザーにわかり易いように擬人化されて映し出されるウイルスとプリカノ。
それを交戦させプリカノのレベルを上げていくのが、このアプリの醍醐味だ。
より有利に戦うために装備の強化にも気を配る。

装備の選択と強化は重要だ。
よりスマートフォンを強固に保護する為に僕は頭をひねる。
各装備のコスト。トータルコーディネイトによるボーナス。
全てを考慮した上で、装備を決めていかなければならない。
コーディネイトがめんどくさいので、僕はとりあえず制服セットを揃え強化した。

それが功を奏し、僕のプリカノのランクはどんどんと上がっていった。
しかし相手は、進化するウイルス、バーチャルウイルスだ。
こちらが強力になればウイルスも強力になる。
終わりが見えないイタチごっこなのだ。
気がつくと僕のプリカノは、ブロンズランクまで上り詰めていた。

プリカノの得意とするテンションを保ち、それにあったスキルを習得し、トレーニングのスタミナ消費を計算して
ウイルススキャンをかける。
それを繰り返し1ヶ月が経とうとしていた。

日々激化するウイルス駆除。
もはや、僕のスマートフォンは「アプリ彼女」を起動するだけの機械に成り下がっていた。
やってくるウイルスを駆除するだけの機械・・・・それに一体何の意味があると言うのだろう。
そんな意味の無い日々を送るプリカノユーザーに朗報が届いた。
なんと・・・このプリカノに大型アップデートが施されると言うのだ。
その名も「ハイパーテンションモード」
ハイパーテンションになったプリカノは攻撃力に大幅な補正がかかり、強力な攻撃力を得るという。
これだ・・・これで一気にヴァーチャルウイルスを駆除し・・・平和なスマホライフを取り戻すのだ。
ハイパーテンションモードに移行するには、まずプリカノのテンションをマックス値の100まで持っていく必要がある。
会話と贈り物を駆使し、なんとか100まで持っていくことができた。
プリカノ!!ハイパーテンションモード起動!!
行こう・・・これで終わらせるんだ・・・!!
まるで血を吐きながら続ける苦しいマラソンのような・・そんな毎日から・・・

おうふ。
そう来ましたか・・・・・。
でもこれも・・・スマートフォンをウイルスからまもる た
め
で
す
ちょん。

おうふっ。
この後、僕はプリカノの指定する箇所を・・・指でつついた。
つつき続けた。
ちょん。ちょん。ちょん。ちょん・・・。

うん。
うすうすは気づいてた。
ウイルスに汚染されているのはスマートフォンではなく。
僕の脳だということを。
こんなはずじゃなかった。
ねえねえ・・・あの人・・・また・・・気持ち悪い目をしてスマートフォンをつついてるよ・・・。
そっとしとこ・・・・。
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