
オンラインゲームの初心者支援で嬉しいのは、感動を分けてもらえる事。
自分にとっては当たり前の事でも、初心者さんにとってそれは初めての体験で・・・
サポートした初心者さんが喜んでくれている姿を見ると、すでに自分の中で 当たり前 に思える事も再び輝きだす。
そうだなあ・・・僕もこのレベルの頃、ここがクリアできて嬉しかったな・・・と。
僕は、長年オンラインゲームでの初心者さん支援を続けてきていたので、初心者さんがどういう所でつまづき、どういう事で悩むかは大体把握しているつもりだった。
そんな自信をまさか自分の父親が覆すとは、思ってもみなかった。
父は、 雪国で自分だけが『半袖』だという事が恥ずかしくて、ゲームをやめた。
もちろん今まで初心者さんからそんな訴えを聞かされた事はなかった。
父から引退した理由を聞いた時は、本当に驚いた。
「えー?そんな事でー?」って笑えるというか、おもしろい話ですよねー。
ほんと初心者さんの気持ちってのはわかんないものだ。
原作ブログは、そこまでの表現で終わっている。
でも実はそれって根深い話で、初心者支援に慣れすぎてしまった人ほど、
初心者さんの気持ちを決め付けてしまっているのではないか?って話の象徴のようにも思えるわけです。
そして、それはリアル世界でも言える事で、ベテランな人ほど素人の気持ちを決め付けてしまってたりするのではないだろうか?
オンラインゲームを通して、その【気づき】を得た 光生。

何度も行われた、脚本製作のための、打ち合わせ会議。
ドラマ製作において、監督が実際に脚本打ち合わせに参加する事は少ないが、【光のお父さん】は、前例の無いタイプのドラマだった為、リアル・エオルゼア両パートの監督達も参加してみんなで頭をひねって考えた。
光生が得た【気づき】をより具体的な形でわかりやすく表現するにはどうすべきか。
その難問に対して僕らみんなで考え、たどり着いた答えが・・・
『オンラインゲームの中で得た【気づき】を
ゲームの中だけで完結するのではなく、それを現実世界に返還する事で主人公が成長していく。』
これを『基本フォーマット』にする事で【光のお父さん】は、一般の人にも伝わりやすい
ポジティブなオンラインゲームのドラマになるのではないだろうか?
第Ⅱ話『光のお父さんが姿を消した。』は、そのフォーマットに則った最初の脚本となった。

■ ファイナルファンタジーXIV 『光のお父さん』
第Ⅱ話 『光のお父さんが姿を消した。』
新人女子社員の離職率が高い原因の調査を依頼される光生(千葉雄大)
最も辞めそうな社員として先輩・袴田(袴田吉彦)が挙げた新人正田陽子(馬場ふみか)に接近する光生。陽子は光生に非協力的な態度をとり続け調査が難航する。
一方、無事ゲームを始め、一見順調そうな博太郎(大杉漣)であったが、ゲーム内のコミュニケーションが上手くとれない。そんな時、博太郎は些細な理由から、ゲームから離脱してしまう。
あまりにも些細な理由が初心者の躓きになることに思い至った光生は、陽子に同じ質問を投げかけてみるのだった。
無事ゲームに復帰した父の危機を救う光生であったが、上手くコミュニケーションが取れない父は光生に精一杯の感情表現をする。

「監督、今日は照明部のくまちゃんが遊びに来てくれましたよ。」
「あ、くまちゃんお久しぶり。」
「おひさしぶりですー!」

【くまちゃん】
リアルパートで照明を担当してくれた製作スタッフ。
元々FFが大好きだったくまちゃんは、FFXVの発売に合わせスケジュールを調整し休みを取ってがっつり遊ぶ予定を立てていたが、まさかの発売延期。そんな時、応援でカメラテストに参加したら、なんとFFのドラマ!?これは参加しないと!と自ら志願してTVドラマ【光のお父さん】の照明を担当する事になった。
ドラマ撮影をきっかけにFFXIVをスタートし、現在はモンクとして頑張っている光のスタッフの一人。今の目標は、ドラマの最終回放送までにツインタニアを倒す事。

「くまちゃん、照明部って現場ではどんなお仕事するの?」
「現場で必要な あかり を作る仕事ですね、暗いところを照らす あかり だけではなくて、木漏れ日を作ったり、お父さんと光生くんの目に白い あかり を入れて、目の表情に動きを足したりするんですよ!」
「すごい!」
「アイキャッチを入れる入れないは好みもありますが・・・僕は入れたい派ですね」
「目に力が入りますよねー!」

「ていうか、エオルゼアパートは、照明部が無いから大変だったよ・・・」
「そうなんですね?」
「特に黒衣森の撮影は大変で、木が多いので、顔にかかる木漏れ日がみるみる変化していくから、照明部!って心の中で何回も叫んでいましたよ・・・
【フラッグ】!ってw」
「フラッグ?」
「大きな黒い旗みたいなやつです」
「なに?それ振って応援するの?」
「違いますっw

たとえば顔にかかる木漏れ日みたいな演出に必要ない自然光を、【フラッグ】で遮って影を作るんですよー」
「あーそれSS撮ってていつも欲しいなーって思うやつだーw」
「そういう風に光を当てるだけではなくて、光をコントロールするのが照明部ですねー」
「他にもトレペ、ビニ枠、しゃ、レフ、銀レフ、ミラー・・・いろんな技術があるんですよ」
「なるほどなあ・・・照明部の仕事って奥深いんですね、おもしろそう」

「そうそう、あかり といえば・・・アキオくんの部屋にエーテライトがあるの知ってます?」

「知ってる!いつも映ってる後ろの青いやつ?」
「あれ 美術部さん のお手製なんですよ。」
「え? あれってわざわざ作ったんだ?」
「アレは 美術部さん の 愛 でできてるんです。
現場でも エーテライト って呼ばれてかわいがられてました・・・w」
「エーテライト とかってわかるの?w」

「だって、みんな FFXIV 始めてましたもんねw わたしもですけど」
「え?それすごく嬉しい!」
「現場でも、昨日ここまでやったよ!みたいなw」
「学校かっ!w」

「でもやってみて 初めてわかることが多かったんです。やってみて脚本に書かれていない 時間の流れ を初めて感じることができました。 前はこのクエストをやってて、今回はこのクエストだから結構たってるな・・・・とか。」
「なるほど・・・」
「美術部さんは 実際にプレイして クエストとクエストの間の
日にち を計算したりしてたみたいですよ。 家の中なので気づかない変化かもしれないですけど、飾り付けを変えたりしてくれてました」
「そこまで・・・・」

「ドラマや映画の現場っていろいろあるんですよ、マイディーさん・・・・。
怒号しか飛び交わない現場もあれば、プロデューサーがいない現場もあります」
「ありますね・・・。」
「個人個人では色々あったと思いますけど、全体的に今回は人に恵まれていたと思いますよ」

「でも、この現場は特別 愛 にあふれている気がしました。
毎日楽しかったです!」
「くまちゃん・・・・。」
「わたしはリアルパートで物語に関われてうれしいなーって。
多分みんなそんな感じだったと思います」

「全てのエオルゼアを愛する人達を代表してお礼を言わせてね、そこまでこの世界を好きになってくれて嬉しいです、本当にありがとう。」
「わたしも一緒に出来て幸せ者です!」
そう言って光の照明さん くまちゃんはメインクエストへと出かけていった。

「いい話でしたね・・・」
「まさか、コメンタリー記事で泣かされるとは・・・w」
「そして、中盤の見せ場・・・半袖事件の真相ですね」
「ここはまあ・・・・
吉田コールを入れるか入れないかで意見が真っ二つに割れましたよね」
「うんうん・・・・」

【吉田コール入れるか 入れないか論争】
原作ブログでも人気があった半袖で引退した父に対し、あまりに斜め上な引退理由に高ぶってしまった感情を、FFXIVプロデューサー兼ディレクターの吉田氏にぶつけるというシーン。
FFXIVは、ゲーム上等で何かしらのトラブルがあった場合、「よしだああああーー!」と叫ぶというユーザーの間で生まれた文化がある。言ってみれば「OH!MYGOD!」、「ああ、神様」みたいな感じと言えば一般の人にもわかりやすいだろうか?
しかしそれは、FFXIVのユーザーのみの文化であって、世間一般では認知されていない。
この父の引退理由を知り、「よしだあああーっ!」と叫ぶ 原作のシーンをTVドラマで再現するかしないかは、脚本作成の段階から意見が大きく二つに割れた。
・「吉田コール」は、原作を読んでくれた人達にとっても、親しみ深いものでカットするなんて考えられない。という考え。
・FFXIVの事を良く知らない人も見るTVドラマという媒体で、一部ユーザーのみにしかわからない要素を入れるべきではないという考え。
わかりやすく言うと、既存ユーザーを取るか、ドラマでFFXIVに初めて触れる人を取るか・・・・という問題だ。
意味がわからない人たちの為に、ワイプで吉田P/Dに出演してもらえないか?テロップで解説を入れるか?という案も出たが、でもそんな事をしてしまっては余計に身内ネタを強調するだけになり、知らない人からすると余計に引いてしまうだろうという結論に至る・・・・。
どうすべきか・・・・。

長い論争に終止符を打ったのは、MBSの局プロデューサー丸山博雄Pの一言だった。
「今の人はわからんかったら、検索しますよ。」
わずか1秒、『よしだー!』と叫んだ所で、FFXIV未経験の視聴者は「何これ、意味がわからない見るのやめよう」とは ならない。
むしろその一言で既存のユーザーや、古くからの読者が喜んでくれて心強い仲間になってくれるのであれば入れるべき。
もちろん、ドラマのあらゆるところを「身内ネタ」で固めていくのはナンセンス。
だが、この注目を集めるシーンで既存のユーザーや読者の期待を裏切るべきではない。
ベテランテレビマンの、説得力のある言葉に皆納得し、「吉田コール」の採用が決まった。

「奇しくも、この論争自体が2話のテーマそのものと重なってたんですよね、FFXIV未経験者が吉田コールで引くんじゃないかっていう決め付け」
「あのシーンの前後には、流れというものがありますからね。吉田コールの前に丁寧にアキオの心の動きを表現してますし、その後のいわゆる【スラング】ですから、説明が無くてもなんとなく伝わるんですよ」
「むしろそれで吉田って誰やねん!って調べたり周りに聞いたりしてくれる効果があるのであれば、わずか1秒のシャウトで恐ろしいコスパですよねw」
「まあシーン繋げてみて変だったら切ろうと思ってましたが、南條さんのあのシャウトですからね、充分伝わりますw 」
「南條さんにやってもらって良かったw」

「そしていよいよ、今回ラストの見せ場!【跪きシーン】ですね」
「はい・・・・」
「ここは力を入れましたよね・・・・」
「天候に恵まれなくて、快晴で撮れるタイミングを3日待ちましたね」
「時間の移り変わりも関係するから、ET8:00前後が快晴でないとダメでしたもんねw」

【インディ跪きシーン】
マイディーの前で、インディが跪くシーンは今作全体のイメージを象徴する重要なシーン。その為入念な準備と万全の体制で撮影が行われた。
監督は、このシーンを使い視聴者の「無意識」に訴えかける演出プランを作成。
今までぎこちなかった二人の関係が「リスタート」する。
そのシチュエーションを「夜明け」のイメージを用いて視聴者の無意識に訴えかける演出プランだ。
まずはET5:00~9:00までの時間、二人のバックに夜明けを持ってきて【タイムラプス】を用いて撮影。
「快晴」の天候で星が巡り、日が昇るシーンを雄大に見せ二人の夜明けを演出。
BGMもファイナルファンタジーの始まりを象徴する「プレリュード」を選択。

引き続き、自分の感謝の感情を覚えたてのエモートで表現する、インディ。
跪いた瞬間を、グループポーズを使って止め、【ローリングショット】を用いて二人に迫る。
このローリングショットは、監督が事前に「プレリュード」を口ずさみながらカメラを回し、カメラの速度と回転数を試行錯誤しながら何度も練習を重ねてくれていたらしい。
練習の成果が本番で見事に発揮され、撮影は一発OKだった。

インディとマイディーを逆光で捉え、ゆっくりとカメラを引いていくシーン。
このシーンは、画像に何一つ加工が加えられておらず生のFFXIVの美しさをそのまま出している。
そう、僕達プレイヤーが毎日見ているFFXIVの画面そのままなのだ。
一連のエオルゼアパートの流れと、光生の幼少時代の思い出、様々な想いがこの跪きに集約し、言葉ではなく、これは二人にとっての夜明けになるんだよというメッセージを映像で表現する。
こういった事ができるのも、ドラマ化の面白いところである。

「照明部や美術部の愛やエオルゼアパートのこだわり・・・そういう見えない作業がひとつひとつのカットを作り上げていくんですよね」
「ドラマを見た感想で なんだかわからないけど涙が出た・・というのをよくいただくのですが、その涙の理由が画面を通して僕達のオンラインゲームへの愛が見えない形で伝わったものだったとしたら・・・それはとても幸せな事ですね」

Ⅱ話、ラストシーン。
フレンドリストに 初めて出来た友達の名前ひとつ・・・・。
マイディーのネームがオレンジ色に変わる。
友達が出来たことで、その世界が何倍も楽しくなるオンラインゲーム。
二人の夜明けと、ここから始まる二人の物語。
不穏な影がかかりつつも、オンラインゲーム上で初めて友達が出来たことに嬉しそうな笑みをこぼすお父さんで第Ⅱ話は幕を閉じる。

「人生にゲームオーバーはありません!あきらめないかぎり!」
エオルゼアパートの撮影を担当する山本組!! 撮影もついに初の蛮神戦の撮影に突入!
弱、真、極、下限レベル、制限解除・・・様々な方式でレイドに突入し撮影が続けられる。

そして【光のお父さん】、初のイフリート戦と言えば・・・タンクを務めるのは・・・
室町きりんっ!!
そう・・・皆様お待ちかね・・・! いよいよ きりんちゃんの出撃ですっ!!
次回、光のでぃさん第Ⅲ話
『光のお父さんにゲームオーバーはなかった。』を振り返る に!
きりんセット!ゴーっ!!