ここは、エオルゼアのファッションの中心地ウルダハ。そしてそのウルダハに門を構える一流の洋品店、その名は
「サンシルク」サンシルクには世界中の裁縫師が修行にやってくる世界最大の裁縫ギルドでもある。
今日も一流の裁縫師を目指すもの達が、自分の作った洋服に袖を通す人々の笑顔を夢見て糸を紡いでいる。
「サンシルク」は流行の発信地ですのよ。今日も売り子は街行く人にそう語りかけている。
「流行の発信地か・・・・。」
裁縫師は赤いカーペットを見て思い出す。

第七霊災が起こるほんの少し前・・・
かつて、ここに一人の少女がいた。その子の名は・・・
チュチュム。チュチュムは金髪に黒いリボンを付けたどこにでもいそうなララフェルだった。
久しぶりに裁縫ギルドに訪れた裁縫師は・・・あの日の仕事を思い出す。
そう・・・あの子にはじめて会ったのは・・・とても晴れたゴールドバザーの昼下がり。

私は、サンシルクの受付であるドスティから受けた仕事で訪れたゴールドバザーにきていた。
ふときづくと人だかりができており何かと思っての覗いてみると一人のララフェルが困り果てて泣いていた。
それが私とチュチュムの出会いだった。チュチュムは裕福な家族と一緒に暮らしているのだが、家族との血の繋がりはない。
その為か、義理の母にあたるウヴィエルと二人の姉からひどい仕打ちを受けていた。
それでもチュチュムはウヴィエルを母と慕い、言いつけられた仕事を懸命にこなしていた。
しかし、今日はその仕事の途中に、義母からもらった
「赤ずきん」を失くしてしまい途方にくれていたのだ。

義母からもらった「赤ずきん」を失ってしまっては、またそれでこっぴどく叱られるのだろう。
周りの人からもなんとかしてやってくれと懇願された私は、一度サンシルクに戻り代わりになる「赤ずきん」を作ってあげることにした。

赤ずきんを完成させ、ゴールドバザーに戻るとチュチュムは街中で義母のウヴィエルからひどい仕打ちを受けていた。
私がウヴィエルに赤ずきんを渡すと態度は豹変し、チュチュムも事なきを得た。

サンシルクに戻ると、赤ずきんのお礼を言うためチュチュムが訪れていた。
驚いたことに、チュチュムはサンシルクに所属するベテラン裁縫師だったのだ。
受付のドスティの提案で、報酬としてチュチュムが自分の持つ技術を私に指導する事になった。
当時の日記:
「お義母さんの赤ずきん」
それからしばらく経ったある日のこと。近くこのウルダハの王宮で舞踏会が開かれることになり、高貴な人たちから大量のドレスの発注が入りサンシルクは多忙を極めていた。
そんな中、あの二人がやってきた。
オックとイードブルガ。チュチュムの義理の姉だ。チュチュムの義母ウヴィエルは社交界の花と呼ばれており、今回の舞踏会には家族全員が招待されたらしい。
オックとイードブルガはその舞踏会に着て行く最新のドレスをサンシルクに発注していた。

二人のドレスを担当したのはチュチュムだった。
チュチュムは二人の姉のことを想い、丹念にこれを仕上げた。
もちろんチュチュムも義理の娘とはいえ舞踏会に招待されている。
しかし、チュチュムのドレスの発注は無かった。

チュチュムももちろん女の子。華やかな舞踏会に強い憧れを持っている。
チュチュムは忙しいさなか、姉のドレスを作った時の端切れを縫い合わせ、自分のドレスを作っていたらしい。

そんな彼女の心にうたれた私は、日ごろの指導に感謝をこめて当時グリダニアで流行していた「カラスの靴」をプレゼントしてあげた。

彼女は夢見たい!と大喜びし、意気揚々と舞踏会へと出かけていった。
私もうれしそうなチュチュムをみて、笑みがこぼれた。
彼女は私の師でもあり、大切な友人なのだ。
当時の日記:
裁縫師と魔法の靴
舞踏会から数日がたったサンシルク。舞踏会が終わり、仕事が一段楽したのもつかの間、今度は高級手袋であるラグジュアリーグローブの大量発注が舞い込んでいた。
ドスティが言うには・・・

ウルダハの王子
「テレジ・アデレジ」が
舞踏会に来ていた一人の女性に恋をしたらしい。なんでも、しかし舞踏会の後その女性はすぐにいなくなってしまった。
テレジ・アデレジは、その女性が忘れていったラグジュアリーグローブがぴったりと合う女性を探し妃にしたいと言い回ってるらしい。

その噂を聞きつけた女性達がラグジュアリーグローブを片方だけ着用し私がその女性ですとうそを付いてアピールする。
気持ちのいい依頼ではなかったが、これも仕事。私はラグジュアリーグローブを納品した。
押し寄せる貴族の女性客達。
まったく貴族も大変だなと思っていたら・・・

そこに現れたのは件の人
「テレジ・アデレジ」だった。
あれ?テレジ・アデレジってこんな人だったかな?と成り行きを見守っていると・・・
噂どおり恋した女性が忘れていったラグジュアリーグローブがぴったりと合う女性を探しているらしい・・・
しかし・・・・テレジ・アデレジの差し出したグローブは・・・
とても小さいララフェル用のグローブだったのだ。そこで、テレジ・アデレジはその場にいたララフェル・・・チュチュムに試してみるよう言った。

手袋はチュチュムの小さな手をすっぽりと包み込み、王子が恋したのはチュチュムである事がわかった。
夢が叶い照れくさそうにしながらも満面の笑みを浮かべるチュチュム。
こうして、私の師でもあり友人でもあるチュチュムはテレジ・アデレジの元に嫁ぐことになったのだ。
そんなチュチュムの笑顔を見た私は、涙を流して喜んだ。
今まで辛かったのは、これからいっぱい幸せになる為の試練だったんだね。
おめでとう・・・チュチュム。裁縫師になって君に出会えて良かったよ。
当時の日記:
裁縫師と小さな手袋
しかし・・・ 王子の下に嫁ぐには多額の
「持参金」が必要らしい。
そんなお金を、あの義母が出すわけもないだろう・・・・。
だからこの話はきっと流れてしまうだろうとドスティは言う・・・・。
私は、なんとも言えない気持ちになりチュチュムに会いに行く。
なんと言葉をかけようか悩みながらチュチュムに話しかけると・・・
チュチュムは満面の笑みでこう私に言った。
最初私は、チュチュムが何を言っているのか理解できなかった。しかし、チュチュムは今までと変わらない笑顔で幸せそうに語り続ける。
テレジ・アデレジに嫁ぐための「持参金」を義母が出してくれるはずもない。
だから毒の入ったりんごを食べさせ、義理の母と義理の姉を殺害し、遺産を引き継ぎそれを持参金とすると。
恋は人を狂わせると言うけど・・・・ここまで変わってしまうものなのか・・・。
いくら自分が幸せになるためとはいえ、それはさすがに止めなければ・・・友人として!!

私はサンシルクに駆け込み、
ドスティに事の次第を伝えチュチュムを止める協力をしてくれと申し出た。早くしないと大変なことになる!!
しかし・・・・ドスティは顔色一つ変えずに私に言った。
チュチュムさんが、毒りんごで家族を殺そうとしている?持参金のために?ええそうざます。そうでないと困るざます。
「血が流れないと、盛り上がりませんもの。」え?
何言ってるの?
それよりも問題は・・・物語の筋を漏らすなんて、困ったこと。チュチュムさんたら、少し、口が軽すぎるようざます。貴方の口止めをしなくてはならないなんて・・・・
ド・・・・ドスティ??なに?? なんの話???

これは逃げたほうが・・・いいのかな・・・
そう思い後ろを振り返ると・・・・
チュチュムのっ!!
テレジ・アデレジも!!何がいったいどうなって!?
たたずむ私を尻目にウヴィエルがドスティと話し始める。
聞いたわよ、ドスティ。あの子がまた、冒険者にペラペラ話したようね。お姫様シーンが近づくにつれて、浮かれすぎよ。役になりきってない。はっきり言って、主役を張るのは早すぎたようね。そしてその後・・・ドスティの口から真実が語られる。

チュチュムとの出会いから今に至るまで・・・・
全てが「サンシルク劇団」による芝居。近日披露する芝居の練習のため、全員が役になりきっていたのだ。テレジ・アデレジも偽者らしい。よく見れば全然似てない・・・。
各地でその芝居の一部を見せることで、噂を広める・・・・。
その結果、「赤ずきん」や「カラスの靴」、「ラグジュアリーグローブ」が売れる。
私を騙し、芝居の練習をしながら流行を作っていく。
今まで何ヶ月にもわたる芝居・・・・。
チュチュムの涙も笑顔も全部・・・流行を作るための芝居・・・・。サンシルクの繁盛のため、利用された・・・。ただそれだけの話。

物語の筋をばらすなと、ドスティは私に3万ギルを手渡した。
何のために私は数ヶ月がんばってきたのだろう。
チュチュム・・・・。
その後第七霊災がおき、5年がたった、
現在の、裁縫ギルドに ドスティ はいない。あれからチュチュムにも会っていない。
あの霊災のあとの生死も不明だ・・・・。

あの日の笑顔が本物だったのかどうかを聞くこともできない。

ひょっとするとひょっこり生きていて、また芝居を打ち、今の流行を作っているのかもしれない。
ここは、エオルゼアのファッションの中心地ウルダハ。そしてそのウルダハに門を構える一流の洋品店、その名は
「サンシルク」サンシルクには世界中の裁縫師が修行にやってくる世界最大の裁縫ギルドでもある。
そしてその流行を作る最高の劇団でもあるのだ。
今日も忙しそうに糸車がまわっている。
つづく。
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