父と一緒に何かを成し遂げた記憶はひとつもない。一緒に山に登ったり、何かを一緒に作ったり・・・そんな記憶はひとつもない。
どんなに難しいプラモデルもひとりで作ったし、どんなに難しいゲームもひとりでクリアしてきた。
互いにゲームは好きだけど、協力プレイをした記憶はまったくない。
つねに仕事に追われていた父を見て育ち、いつのまにか僕は無意識に「一緒に遊ぶなんてとんでもない。」という発想生まれ、今の今まで生きてきたんだろう。
僕は今、生まれて初めて父と一緒に遊んでいる。
光のお父さん計画・・・・。それは、60歳を越えるゲーム好きの父にFF14をプレイしてもらい、自分は正体を隠してフレンド登録。
共に冒険を続け、いつの日か自分が実の息子である事を打ち明けるという壮大な親孝行計画である。
真タイタンへの挑戦を終え、大迷宮に挑む決意をした光のお父さん。
あれから約1ヶ月が過ぎ、ついに大迷宮へ挑む準備が整った。
数々の想いを持って集まった8人の光の戦士たち、その挑戦が幕を開けるのだ。
2015年 1月19日[月] たまり場。正月ムードも薄れつつあるたまり場はこの日特別な緊張感を持っていた。
本日、ついに光のお父さん計画の大詰め、大迷宮への挑戦に入る。
事前に突入日をツイッターで知らせていたこともあり、たくさんの方が出発前に激励に来てくれた。
しかし、ここに光のお父さんはいない。

アイテムレベルの最終確認を行うじょびメンバーたち。
めるくんは、IL70に揃えながらもミラプリを行いおしゃれに着飾っていた。
みんな言葉数は少ない・・・。
そう・・・みんな緊張しているのだ・・・・。うまくいくのか?自分のミスで失敗に終わるのではないか?
もうすでに大迷宮への戦いが・・・おのおのの心の中で戦い始めているのだ。
そんな緊張の中・・・
光のお父さんがログインした。

さっきまで食卓で一緒にご飯を食べていた光のお父さん・・・。
いつになく無口だったな・・・お父さんも緊張しているんだろう・・・。
それも仕方ない・・・今回僕は、大迷宮1層についての情報を明確に父に知らせていない。
今回も自分で何とかして情報を集め、挑むのであろう。
大迷宮1層では吟遊詩人が大きな鍵になる。それを何らかの形で知り緊張しているのだろう。
少し声をかけて緊張感を和らげてあげるか・・・・。
マイディー「今日いよいよ大迷宮ですねっ!」誰もが緊張してそのレスを待った。
しばらくのち・・・光のお父さんはぼそりとつぶやいたのだ・・・・。


ほんらい・・・・

本来、我々が日常的に使用しているキーボードには「Backspace」キーというものが存在する。
これは、一度入力した文字を一文字ずつさかのぼり消していく機能を持っている。

オンラインゲームにおける、普段の会話は「チャット」で行われる。
文字を入力するバーに、発言したい言葉をキーボード等で入力しエンターキーを押すことで発言、相手に意思を伝える。
その過程の中で文字を入力しエンターキーを押す前に、我々は瞬間的無意識に入力した文字の見直しを行う。
誤りがあった場合はこの時点で「Backspace」キーを使い文字を訂正し、発言する。
それでも誤字、脱字は日常茶飯事ではあるが、
今回の「いや」を使った「言い直し」は起こりえない。入力した文字に大きな誤りがある場合間違いなく訂正をするはずだ、それでもあえて訂正せず、言い直した上での発言は、意図的に行ったとしか思えない。
今回のケースは、発言者自身の年齢、声かけから返答までのタイムラグ、発言内容、全てを鑑みた結果・・・
この発言の正体は正真正銘の・・・
「オヤジギャグ」というやつか・・・。食らった。
のぼり詰めた世界チャンピオンのタイトルマッチで、1R開始と同時に強烈なやつを食らった。
僕は力なく「W」を3つぐらい入力してエンターを押すことしか・・・できなかった。
「W」は便利だ・・・たとえ僕が泣いていても、怒っていても・・・これさえ入力すれば笑っているように見えるのだから・・・。
そんなインターネットにおける人付き合いの根底まで考えが及ぼうとした時、、光のお父さんは次の発言で戦士としての表情を取り戻していた。
わかっている・・・・!!キャラを作ったとき、なんとなく選択した「弓」という武器。
「弓」を選んだその日から、この日が来る運命にあった光のお父さん。

その運命を受け入れたのか・・・・。
モンクで沈黙を入れるためにスキルスピードを意識して組んだこの装備もおせっかいだったのかもしれない・・・。
その発言から、大迷宮に対し「吟遊詩人」として戦う覚悟を感じる。貪欲に沈黙を狙っていく姿勢・・・!!それが大迷宮に挑む詩人の姿!!まさかの「オヤジギャグ」で
僕らの沈黙まで狙ってくるとは思わなかったぜ!!そしてついに出発の時間がやってきた・・・。
マイディー 「準備良ければコンテンツをファインドします!」「行けます!」「OKです」「はい」「は~い」それでは・・・光のお父さん最終フェーズ、大迷宮バハムート邂逅編・・・。
その入り口の門を開ける・・・!!
マイディー 「コンテンツファインド!!」
シャキーン!!突入!!各々の想いを背負った8人の光の戦士。
ついに大迷宮の重たい扉がゆっくりと開く。
画面は暗転、そして我々の前に映し出される・・・大迷宮の姿・・・





僕らにとっては懐かしい空気・・・。
光のお父さんとARISEのメンバーは初めて見る、今までは明らかに違う凄味を持った風景。
オレンジ色のクリスタルの明かりが自分たちを柔らかく照らす。
そらりすさんがじょび側のチャットで僕らに注意を促す。
そらりすさん 「超える力、お気をつけて」ああそうだった・・・久しぶりの1層の空気に飲まれていて忘れそうだった。
僕は、自分についたバフステータス、「超える力」を右クリックで落とした。
「超える力」とは?FFには数々のバトルコンテンツがあり、日々追加実装が行われている。
古くなってきたコンテンツは、その難易度が緩和され、後発の人たちが最先端に追いつきやすいシステムになっている。。
FF14では、この難易度の緩和を「超える力」の付与という形で行っている。これは、バトルコンテンツの難易度を落とす調整を行うのではなく、プレイヤーたちの能力を大幅にアップさせ攻略しやすいように調整される。これが特殊ステータス「超える力」の付与だ。
具体的には、プレイヤーの体力や、攻撃力、回復力を大幅に上げてくれるボーナスである。
プレイヤーはこれを任意にカットする事が可能だ。超える力をカットする事により、当時の難易度で挑む事ができる。

今回、大迷宮邂逅編をクリア済のFC:じょびのメンバーはこの「超える力」をカットし当時の難易度で挑む。
装備も最低限のアイテムレベルの為、おそらくは当時よりも難易度は高くなるだろう。
そこまでする理由はただひとつ、そのハンデを乗り越え、5層をクリアし「8人全員」で感動を共有する為だ。
これはお手伝いではない、光のお父さんとARISE、そしてFC:じょび全員での「挑戦」なのだから。
そして我々8人の前に、アレが姿を見せる・・・。かつてFC:じょびに絶望を見せ付けたアレが・・・


大迷宮最初の難関・・・「制御システム」通称・・・・ 「まる」ここに初めてたどり着いた冒険者の目も丸くなる。
え?これ?どんな怖いやつが出てくるのかドキドキしたのにこれ?
このまるいのと戦うの?
張り詰めた緊張感から開放され、そして口々に言うだろう。
「まるいww」 「なにこれww」 「弱そうww」思わず言ってしまいたくなるのだ・・・押さえ切れずに・・・
ああ・・・・みんな知ってるはずなのに・・・。
戦う前に相手の容姿を馬鹿にするのは・・・確実に「死亡フラグ」であるということを・・・・。
即座に戦闘態勢に入るメンバーたち。忍者:あんじゅくんの印の音がカンカンと響く。
待て・・・!
るぶくん 「あのガンツみたいなの悪いやつかな」と剣を抜く・・・!!
待って・・・!!落ち着いて・・・!!
足並み揃えて・・・いか
きりん 「ガツンとみかん!!」意味わからんっ!!
しかし、きりんちゃんの発した
「ガツンとみかん!!」があまりにもレッツゴー的に聞こえたのか、全員まるに向かって走り出し 済し崩し的に まる との戦闘が始まってしまった。

あっという間に地獄絵図が展開されていく・・・・。
足並みを揃えなかったため、全員の戦闘タイマーがバラバラだ。
大迷宮というプレッシャーはこうも人を狂わせるのか・・・・。

まるが縦に割れ、野太い透過レーザーが放たれた・・・
今のアイテムレベルだと直撃は死をのもの。
狭い廊下で戦うので視点の確保も難しくやっかいだ。
そして何よりもやっかいなのは・・・この直後に放たれる・・・
高圧電流だ。高圧電流は回避不可能な大ダメージを食らう全体攻撃。発動すればパーティー全員の体力が大きく激減し、ヒーラーはてんてこ舞い。
さらに恐ろしいことに・・・
電流の力で数秒間身体が「麻痺」する。麻痺した身体は数秒ごとに硬直が訪れる。
ただでさえ範囲攻撃が多い制御システムの攻撃は足を使った回避が必須だ。
しかも視界の悪い狭い廊下での戦い。
麻痺してしまうと、その回避運動の難易度は急激に上がり死者が続出する。
それが大迷宮攻略においての最初の壁 「高圧電流」 だ。しかし、この「高圧電流」にはひとつだけ弱点がある。
それは詠唱時間である。決まったパターンで放たれる高圧電流は、詠唱開始から発動までの時間が長い。
その詠唱スタートから発動までの間に
「沈黙」の効果がある技を叩き込めば詠唱は止まる。
つまり、高圧電流の発動をカットできるのだ。

「沈黙」の効果を付与する攻撃はほぼ各職に用意されている。
だが、一度使ったら再使用するまでに時間を有するものが多いため、毎回高圧電流を止めるのは不可能に近い。
二つのジョブを除いては・・・。制御システムの「高圧電流」に対して有効な感覚で「沈黙」が放てるジョブ・・・
それが、「モンク」と「吟遊詩人」だ。吟遊詩人は「ブラントアロー」を使用すれば対象に「沈黙」を付与することができる。
一度使用しても再使用までに有する時間はわずか30秒。
一方、モンクはコンボの三発目終了後、参の型の状態で「壊神衝」を放った場合のみ、相手に「沈黙」が付与できる。
これを可能にするには高圧電流発動に照準を合わせコンボのタイミングをぴったりと合わせなければならない為、難易度が高いとされている。
その為、「高圧電流」の封殺は、吟遊詩人に任される事が多い。すなわち、制御システムの攻略は光のお父さんにかかっていると言っても過言ではない。
済し崩しに始まってしまうと完全にタイミングが狂い「高圧電流」を止める事ができない。
8人のタイミングやリズムも合わせていかないとクリアが難しい・・・
それが大迷宮だ。最初のアタックはこれにより全滅。
勢いではどうにもならないと全員身にしみる。

突入の前日、父は「高圧電流」という言葉を口にしていた。
・・・・ということは・・・知っているのだ。
この1層をクリアする鍵は自分であるという事を・・・。
激しい戦いは何度か続く。
1発目はナイトが沈黙を使い、2発目からは光のお父さんが沈黙で高圧電流を止める。
その段取りで戦うことになった。

徐々に高圧電流の発動が減ってくる。
光のお父さんが「沈黙」のタイミングに慣れてきているのだ。

より完璧に止めるため、遇数回を光のお父さんに、奇数回を自分か学者のそらりすさんが止めるような流れになった。
3回戦目からはほとんど高圧電流が降らなくなっていた。

僕は知っている。
大迷宮に行こうと決まった日からモードゥナでライトニングスプライトを相手に沈黙の練習をしていたことを。
これがその練習の成果だということも。
「へっへー!実はちゃんと練習してたもんねー!」と自慢する事はおろか、一切口にしない。
まあ、多分、チャットするのがめんどくさいだけだと思うけどw

しかし・・・
僕たちクリア組はアイテムレベルを落とし火力を抑え、超える力もオフにしているが、かなり削りが早い。
ARISEとお父さんは最新装備だからだろう。ごり押しでいけるんじゃないかと思うほどだ。
リミットブレイクゲージの溜まりも上々だ。

自分たちが挑戦してた頃は、沸いた雑魚と制御システムが合体するとほぼ倒せないようなイメージがあったが、合体しても結構押せている。
高圧電流も抑えられるようになってきたので、あとはARISEがこの雑魚の意味に気づいたらこの制御システムは攻略完了するだろう。もう少しだ。
その時だった。
ああっ!!ああーーっ!!雑魚がボス周辺によってきた!!だ・・・・・だめ!!まだだめ!!まだARISEが雑魚の扱いについて謎を残したままだ・・・!!
制御システムの残りHP数パーセント!!敵の密集!!それはだめなんだー!!その絵づらを彼に見せてはいけないっ!!
呼び起こす!!眠れる獅子を呼び起こす!!まるで惑星直列のような美しい密集を彼に見せると・・・
シュゴオオオオ!!地面に美しい青い円が描かれる。
ああ・・・・やっぱり・・・
FC:じょびネッツア DPS課 めるめる。非常におしゃれでイケメン。そして性格もバッチリ良い。
とても温厚で前向きな彼。

彼は一撃学園に入学後、黒魔導士を目指し冒険を始める。
だが、マイディーが同伴したタムタラダンジョンでリミットブレイクのメテオを任される。
そのタムタラで彼はあまりにも緊張してしまいメテオ発動までに7分を所要したという伝説を持つ。

その後の彼は、教官であったりりーさんより、「全てのボスにメテオ」を決めて卒業せよという特別課題を与えられそれを見事に成し遂げた。
「メテオ」に特化した教育を受け、一撃学園を卒業しためるめる。

あれから1年たった彼のメテオはメンバーから
「めるめるめてお」と呼ばれるようになり、針一本狂わない正確照準で落とされる「めるめるめてお」はFC:じょびの大きな力となった。
そんな経歴を持つめるめる・・・・。
そんな彼が・・・

この状況を見てトリガーを引かないはずはない。
そんな彼を誰が責められようか・・・。

彼を「メテオスナイパー」として教育したのは、我々じょびネッツアなのだから・・・

気がつけば・・・・

さっきまで猛威を振るっていた制御システムが・・・燃えないごみのように力なく転がっていた・・・・。
何はともあれ・・・勝ってしまったのだ・・・。
しかし、ARAISEのメンバーは何だかわからないまま勝ってしまった・・・そんな感じだろう。

めるめる 「すみません・・・・」
マイディー 「LBはできるだけARISEに打たせてあげよう・・・」
めるめる 「以後気をつけます。少しだけ焦りました・・・」
無理もない・・・。気にするなめるめる・・・。
僕たちだってあの頃より難しい難易度で挑んでいるんだ・・・。
この先も自分たちがイメージしているように行くとは限らない。
ともあれ「制御システム」は倒した。
だが、大迷宮バハムート、邂逅編1層はこれで終わりではない・・・。「制御システム」は序の口に過ぎない。8人の光の戦士はそれぞれの想いを胸に抱きつつ歩みを進める。
ここはエオルゼアの地下237ヤルム。
僕たちの目指す5層は・・・まだまだ先だ。
つづく。
次回予告!
「制御システム」を倒した8人!大迷宮地下237ヤルムの戦いは続く。
光のお父さんとARISEは、新たな脅威を目の当たりにする。
メンバーは倒れ、逆転のファイナルへヴンも破られる。
再び地獄絵図と化す大迷宮で老兵は決意する。
果たして、地下237ヤルムに勝利の光を呼び込むことができるのか?次回!光のお父さん!「光のお父さんはスライムを運搬した。」・・・にご期待ください!!
マイディー 「きりんセット!・・・・・ゴー!!」
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)